低温で動作しなかった試作品の思い出

 前回、-40℃で動くってすごい、という話を書いた。それには理由があって、若い頃、-15℃で動作させることができなかった経験があるのだ。
 PCなどでは、CPUを冷却することが重要なので、高温側のことを気にすることが多い。でも、低温側も、実は難しい。かつて勤務していた会社では、動作保証範囲に対し、15℃のマージンを要求していた。0~40℃という製品だったので、-15℃で動作させる必要がある。でも、これが動かないのだ。原因は、電源に入れた電解コンデンサの液が凍結して、インピーダンスが高くなり、電源が安定しなかったのである。使っていた電解コンデンサよりも、動作保証範囲が広くESRが小さいものを選び、再度試験をしたら、大丈夫だった。
 すぐにこのことがわかったのかというと、そんなことはない。技術者としてひよっこだった私は、どうすればいいのか、さっぱりわからなかったのである。先輩技術者に相談したところ、基板を一目見て、この電解コンデンサに冷却スプレイをかけてみろ、と言われた、常温で動作していた基板が、解コンデンサに冷却スプレイをかけるだけで、動作しなくなったのである。その時に、電解コンデンサの液が凍るという話を聞いたのだ。経験の差というのは大きい。
 この時、回路技術だけではモノ作りはできず、部品の特性をよく知ることが重要だということを知った。前に書いた部品知識の重要さにもつながる話だ。