熱設計は難しい

 今、開発現場で熱による手戻りが頻発している理由を読んで、かつて熱設計で大変だった開発案件を思い出した。
 その昔、LAN関連の部品にはNMOSが多かった。CMOSと比べて、熱対策が重要で、ファンが必須だった。でも、作っていたのはPCではなく、組み込み機器である。組み込み機器で、ファンをつけるというのは、本当に嫌がられる。
 そもそも電子機器で最も故障の確率の高いのは電源である。でも、その電源よりも故障の可能性の高いのはファンである。メーカーによって、ファンをなくすというのは、大きなメリットがあった。
 でも、そのための放熱が難しい。当時も熱に関するシミュレータはあったが、使いこなすことができなかった。結局は、試作しては、評価するというサイクルであった。

アルミ製LANケーブルという存在を初めて知った

 通信障害が発生したら、真っ先に「アルミ製LANケーブル」を疑うべき理由という記事は、本当に参考になった。ケーブルというのは、銅線に決まっているという思い込みがあり、コストダウンのために内側にアルミを使うという製品があるとは思いもよらなかったからだ。
 POEで使うと障害の元らしい。まあ、POEでなくても、こんなケーブルは使わない方がいいと思う。通信障害のかなりの部分はケーブルである。もともと、LANケーブルのRJ45コネクタは信頼性が低い。それに、ケーブルそのものの問題もかかえるとなると大変である。

Interface 2月号の特集は「組み込みコンピュータ技術512」:本誌お得意の事典記事

 Interface 2020年 02 月号の特集は、「組み込みコンピュータ技術512」。本号でInterface誌は、通巻512号らしい。512号というコンピュータ技術者以外にとっては中途半端な号数で記念号を発行するあたりが、本誌らしい。しかも、記念のTシャツまで作るようだ。
 それはともかく、本号は、コンピュータ256とデバイス256に大きく分割し、それぞれの分野で、基本電子部品16のように、事典形式で基本的な技術を紹介している。本誌お得意の記事であり、組み込み技術を満遍なくカバーしている。じっくり勉強するというよりは、少し時間のあるときに眺めて、技術分野を広げるという使い方に最適だと思う。

0.25mm×0.125mmで0.1μFの積層セラミックコンデンサー:パスコンがまた微細化する-手付けできないよなあ、どう考えても

 0.25mm×0.125mmで0.1μFの積層セラミックコンデンサー、村田製作所が開発という記事を見て思ったのは、パスコンが、また微細化するということだ。
 モバイル機器の開発では、部品の微細化は重要だ。だが私が設計している産業用の機器では、微細化は特に必要ない。といっても、さすがにリード部品は使わない。
 そうなると、部品の主流は、数が多いモバイル用途に引きずられ、どんどん微細化が進むと言うことになってしまう。現場としては、1608あたりのサイズが、手付けで実装もできるので、うれしいのだが、パスコンで多用する0.1μFは、今や1608は生産中止になったメーカーが多い。しかたなく1005を使って設計している。まあ、1005でも、手付けできる範囲なので、まあいいのだが。だが、これ以上、微細化が進むと、手付けできなくなる。見えなくなるかもしれない。
 機械でしかハンダ付けできないとなると、中小企業の電子屋さんは失業である。まあ、今でも、生基板に部品を自分でハンダ付けするという機会はなくなった。でも、どうしてもリワークが必要な時に、手付けできるサイズか否かは開発者にとって死活問題だ。

オペアンプが今でも進化しているとは

 米ADIで働く日本人技術者に聞く、オペアンプの地道な進化という記事は、技術というものの継続性の重要さを教えてくれる。オペアンプというのは昔からあるデバイスだ。アナログ回路を勉強するときには必須のデバイスであった。
 そのオペアンプの開発が今でも継続されているらしい。CMOSでも高耐圧のものを作るとか、いろんな進化があるようである。派手さはなくとも、こういう地道な開発は、メーカーにとってのコアだろう。

プロ事務員?:こんな変な仕事があったとは

 大企業の無駄な仕事の大半は、昔大企業に勤めていた私も見聞きしたこととか、実際に経験したことが多い。だが、熟練者しか操作できない残念な社内システムが生き残る、もっと残念な理由という記事で触れられていたプロ事務員という仕事は初めて聞いた。不合理な社内システムを熟知し、他の社員のかわりに社内システムを操作する社内システム操作専用の事務員のことらしい。
 いくらなんでも、これは・・・。

アナログオシロ テクトロの2465:懐かしいが、すぐにデジタルオシロの時代になってしまった

 オシロは、組み込み技術者にとって、JTAGデバッガの次に重要なツールである。最近のマイコンは、良く使う周辺回路を内部に取り込んでいて、しかも評価基板、サンプルソフトも充実しているので、私が開発している程度のマイコン基板だと、オシロを見ないと解決できないことというのは、昔に比べて少なくなっている。
 昔のマイコンは、CPU機能だけしかなく、ROMやRAMですら外付け回路が必要だった。なにかというと、オシロの出番だった。デジタルオシロスコープの歴史や種類に写真が掲載されているアナログオシロの2465は、私も使っていた。このオシロのツマミや配置が、私に刷り込まれてしまって、他のオシロが使いにくいと思ってしまうほどだ。
 とはいえ、マイコンのソフトがらみのデバックでは、アナログオシロは使いにくく、結局、ワンショットのトリガをかけられつデジタルオシロに早々に乗り換えることになる。後には、ロジアナとオシロが連携して、ロジアナで複雑なトリガをかけて、その時の波形を見たりという高機能なものが登場した。
 その後は、どうなったかというと、マイコンの高集積化が進み、そんな高機能なツールを使わなくても、基板を開発できるようになった。そもそも、マイコンのバスがマイコンチップから出てこなくなったので、今、観測するのは、I/F信号くらいだ。時代というのは、変わるモノだ。

2019年Q2の半導体売上高ランキング、ソニーが9位に:特徴のある製品があれば日本企業もまだ世界で通用する

 2019年Q2の半導体売上高ランキング、ソニーが9位にという記事は、いつもソニーと対比されるパナソニックが半導体部門を見捨てたのと対照的な話である。これを牽引したのはCMOSイメージセンサーだ。映像技術がなくなれば、白物家電を持たないソニーは成り立たない。だから、自社消費も含め、技術開発を続けているのだろう。

「土に還る」IoTデバイス:こういうものが開発されないと本当に使い物にはならない

 大阪大学が回収不要の「土に還る」IoTデバイス、災害対策の用途を想定は実用化されれば、素晴らしい技術だ。
 従来から、商品のタグにRFタグを使うという試みがある。でも、RFタグを使った途端、可燃ゴミでなくなる。使い捨てにできないRFタグではなく、紙にQRコードの方が、環境にはやさしいよなあ、と思っていた。
 でも、土に還るデバイスであれば、どんなところにデバイスをつけても、環境問題は引き起こさない。