大企業病:決めないリスク

 大企業病:決めないリスクという記事を読んで、思わずうなずいてしまった。書いてある話は、昔からよくある話で、特に新しいことではない。それよりも、いつまで経っても、この手の話が現役であることに苦笑したのである。
 技術開発のGO/NGの決定の場で、「この新商品は、年間どのくらい売れて利益はどのくらいになるのか?」「売れなかった場合のリスクはどうするのか?」「他社の成功事例はないのか?」という質問が出てくるという経営人のバカさ加減である。どのくらい売れるかわかるような新製品があるわけない。
 前職で大企業の開発部門にいたが、この手のことで潰された技術をいやというほど経験もし、見てもいる。何とか開始しても、バカな経営者に代わった途端、中止になってしまった技術もある。その開発中止から数年たって、いろんな会社がその分野に着目し、再び、その技術開発を開始するといいうニュースを少し前に聞いた。私の知る限り、その時のキーマンは、当時の会社の決定に反抗し、転職して、技術開発を継続している。いくら大企業でも、今さら、という感じである。

マイクロチップ社のコード・カバレッジ・ツール:有償らしい

 ソフトウエアのホワイトボックステストをする際に必要なツールがコード・カバレッジ・ツールだ。C0とかC1とか、テストのカバレッジの定量基準もある。でも、実務上重要なのは、C0とかC1とかの数値を100%にすることではない。とても、ありえないようなテストパターンを追加しないと100%にならないことが多いからだ。そんなことに時間を費やすなら、非機能要件のテストに時間を費やす方が、品質に貢献すると思う。
 実際には、実行されたコードを見て、エッ?ここがテストされてないの?と開発者が気づくことで、大きなバグを免れるというパターンが一番有効なのではないか?と思っている。
 でも、組み込みでは難しい。どの経路を通ったかというログを、実メモリーに残し、それをツールが吸い上げ、表示するという複雑な処理が必要だからだ。マイクロチップ社が、MPLAB Code Coverageというツールを発表した。是非使いたいと思っていたら、有償オプションだった。しかも、無料で一定期間お試しという評価版もない。直販ショップの価格で、9万円弱なので、ホビー用途には使えない。小さな企業だと、何も評価せずに、とりあえず買っておこうというレベルの金額でもない。せめて、評価版を用意してほしい。

Intelの垂直統合:最先端技術の全面戦争は大変だなあ

 前に、半導体プロセス面では、IntelがTSMCの後れを取っているという話を書いた。もう一つ、大変だなあと思った記事がある。新FPGAに見えるIntelの焦燥だ。CPU-アクセラレータ間バス技術で、NVIDIAに後れを取っているというのである。
 もちろん、半導体プロセスにせよ、このバス技術にせよ、後れを取っているといっても、トップ集団を維持しているのは確かだし、CPUメーカーとしては、特定の技術が突出しても、売れるCPUは作れないので、Intelの技術が劣っているという話ではない。
 こうした技術開発は、本当に多額の開発費がかかる、こうした開発を、多方面で展開しているIntelという会社のすごみを感じたのである。足りない部分は、積極的にM&Aしてでも手に入れる。結局、どこも追い越せないはずである。

半導体のプロセス技術:IntelよりもTSMCがかなりリードしているみたい・・・

 半導体において、微細プロセス技術は、最もコアな技術だ。半導体の機能・性能だけでなく、コストにも影響する、開発技術でもあり量産技術でもあるという技術だからだ。
 TSMCがEUV適用7nmプロセスを商用化という記事を読むと、相変わらずTSMCが業界のトップを独走しているようだ。それに続くのはIntelなのだろうけど、さすがの巨人のIntelでも、なかなか追いつけないようだ。

台湾のタピオカドリンク店「タイガーシュガー」はおいしかった

 台湾発のタピオカドリンク店「タイガーシュガー(TIGER SUGAR)」が日本に初上陸
日本でタピオカドリンクをまだ飲んだことはない。少し前に、台湾へ旅行に行ったときに、ホテルの近くで、毎日のようにタピオカドリンクを飲んでいた。その時に、一番おいしかったと思ったのが、タイガーシュガーだ。これが日本に上陸ということで、飲んでみたいが、出店先が原宿となると、また混むんだろうなあ。年寄りが行くところではないかもしれない。

Interface 12月号の特集は「注目オープンソースRISC-Vマイコン」:本誌独自の切り口

 Interface 2019年 12 月号の特集は「注目オープンソースRISC-Vマイコン」。32ビットマイコンのデファクトがArmになってしまった現時点で、その対抗馬として唯一の可能性がありそうなマイコンである。
 少し前までは、FPGAに実装して動かすということしかできなかった。ところが、本誌によると、STM32F103とピン互換のRISC-Vチップが出現し、Sipeed社がそれを使った500円のボードを発売した。それによって、状況はかなり変わってきたようだ。
 今までRISC-Vの特集といえば、FPGAにどうやって実装するかというのが中心であった。ところが、本特集では、こうした入手しやすいRISC-Vボードの紹介や、クラウド上でRISC-Vを実験してみる方法など、内容は盛りだくさんだ。もちろん、FPGAへの実装も紹介されていて、本誌お得意の、大図鑑ということで、いろんな実装を紹介している。さらには、実際にチップを作るには、どんな工程があって、どんなツールが使えるのか、という紹介まである。
 RISC-Vの世界が少し広がっていることを実感できる特集である。

とうとうルネサスもArm軍営に:RXコアも続けるらしいけど

 ルネサス、Armマイコン「RAファミリー」を発表という記事は、とうとう、か、と思ってしまった。ルネサスは、独自のコアRXコアを持っていて、積極的に展開している。少なくとも、主力製品は、RXコアだった。でも、この発表は、かなり本格的にArmコア製品を出荷するという。リストラの続くルネサスに、複数のコアを維持できる体力があるとは思えない。
 特に、大変なのは、ソフトウエア開発環境だろう。独自コアでは、自前で開発する必要がある。そういう意味では、Arm陣営に乗り換えた方がこのあたりの開発負担が軽減されるはずだ。今のユーザーを裏切るわけにはいかないから明言はしていないが、徐々にArmに移行していきそうな気がする。

GEの航空機エンジンのモノからサービスへが実はビジネスになってないとは

 IoTの成功例として必ず引用されてきたのが、GEの航空機エンジンの保守ビジネスである。エンジンに積んだセンサーからデータを集めて分析し、継続的にメンテナンス・サービスを提供するということで、IoTによって、モノ売りからサービスへ新しい価値を提供できるということと、データの価値を活用するということで、大きな賞賛をあびてきた。
 ところが、GEも見落としたIoT成功の条件によると、このサービスは、そもそも顧客に求められていなかったのだという。顧客である航空会社は「センサーからのデータを基にしたメンテナンスなら自分たちでやっている。データサイエンティストも社内にいて、データ分析ができる体制が整っていた」のだ。もちろん、こういう会社ばかりではなく、GEのサービスを必要とするような航空会社だってあったはずだ。しかし、人材の豊富な大手なら、データサイエンティストが社内にいたに違いない。なぜなら、もっと収益に直結する顧客予測に基づく航空運賃設定でデータ活用していただろうからだ。
 モノ売りの会社がサービスを提供することの難しさを実感する話である。