昼休みが短く室内は薄暗い、レガシー製造業型のIT職場は活力が生まれないという記事には笑ってしまった。まるで、前職の大手電機メーカーのオフィスだったからだ。
そんな時代後れのオフィスも、周囲の変化に負けて、変化させようという圧力がかかってくる。例によって、大企業は形から入るので、一気に斬新なオフィスになってしまう。でも、仕事というのは、そんなに一気に変化しない。今までは、時代後れすぎたことが、斬新すぎてやってられない、というようになってしまう。しかも、金をかける部分が、見栄えなので、やっかいである。
私自身は、知的作業におけるオフィスで最も重要なのは、個人当たりのスペースと椅子だと思う。特に、いい椅子かどうかは、すごく重要だ。そして、いい椅子は、思いっきり高い。見栄えの方に金をかけすぎて、椅子の質は追いやられてしまう。しかも、空間はそれほど広げられないので、1人あたりの空間もそんなに広がらない。
企画ならノートPCだけで仕事できるかもしれない。でも、IT技術者となると、やはり大きなディスプレイを2つは欲しい。キーボードも重要だ。
仕事の場と同じくらい重要なのは、食だ。おいしい社内食堂というのは、シリコンバレーのIT企業の特色だ。でも、それを真似しようとするレガシー製造業は聞いたことがない。見栄えのいいオフィスがあったって、昼食がまずければ、うんざりである。
カテゴリー: 開発業務
アセンブラの重要性:まあ古い技術者の戯言かもしれないが
汎用機で育った技術者はオープンで活躍できるが逆はないのはなぜかという記事は、相変わらずの谷島節だ。でも、今でも新人教育でアセンブラをやっている企業があるのには驚いた。
私は、組み込み屋なので、一般的なIT技術者よりも、アセンブラを使う機会は多かった。多かったというのは、現時点では、アセンブラを使ったことがないからだ。今、仕事で使っているPIC32は、MIPSコアだが、どんな命令体系なのかも知らない。armは、ディジタル回路設計とコンピュータアーキテクチャ[ARM版]で、命令体系は知っていて、この本で出てくる程度のプログラムは書けるが、それだけである。
昔は、少なくとも、スタートアップルーチンは、アセンブラで書く必要があった。今では、開発ツールが自動生成してくれる。必要ないスキルは勉強する必要はない。
でも、である。アセンブラは、CPUを理解する役に立つことは確かだ。
メーカーにとっての生産技術
生産技術をないがしろにする製造業に未来はあるかは面白い分析である。そもそも、デザインで食べているようなアップルが実は生産技術を重要視しているように、メーカーにとっての生産技術は、今でもコア技術である。生産に関わる部分を全てを丸投げしても儲かるほどの、素晴らしい企画があればいいが、そんなものはどこにもない。生産技術を放棄するということは、メーカーであることをやめるということだと思う。
日本語教育の重要性:人は言葉で理解する
9時10分前を理解できない若手を生んだ日本語軽視のツケに紹介されるエピソードを読んでげっそりした。長くなるがその一部を引用する。
「部下に『そのタスクは結構、骨が折れるから覚悟しておけよ』って言ったら、『え? 肉体労働なんですか?』って返された。どうやら骨が折れるを骨折と間違えたようだ」
「社長に褒められた部下に、『現状に胡座(あぐら)をかいてると、後輩に追い越されるぞ!』って活を入れたらキョトンとされた。あぐらをかいて座ることだと思ったみたいです」
「送られてきたメールが一切改行されてないので『読みづらいから、項目ごとに改行しろ』と言ったら、『改行って何ですか?』と言われてあぜんとした」
「営業先で『お手やわらかにお願いしますよ』と言われ、会社に帰る途中で『あの人、やわらかいんですね。どうしたらやわらかくなるんですか?』と真顔で聞かれた」
もっと、いろんなエピソードが紹介されている。実話とは信じられないが、実話のようだ。基礎教育を怠ってきたツケがまわっている。
語彙力のない人間に、新しい発想はできない。人間は、言葉で理解する動物だからだ。考えることのできる範囲は語彙の集合とほぼ重なるのではないか?技術者の場合、その語彙の中に、専門分野の語彙だけでなく、数学という語彙も入ってくる。言葉だけでは理解できないことも、数式でなら理解できることも多い。図的能力も語彙の一種だろう。
結局、教育というのは、人の語彙を充実させることが大きな目標なのではないか?その基礎中の基礎は、当然、日本語だ。
昔、ある著名な情報工学の権威が、プルグラミング教育なんかやる時間があるなら、国語教育をしっかりしろ、と言っていたのを思い出す。英語教育とか、いろんなことを、小学生のうちに始めさせてなにがいいのだろうか?
国語と算数、この2つが基本である。少なくとも、組み込み技術者はそうだ。仕様書を日本語で書き、回路のかなりの部分はオームの法則で計算する。若い頃に勉強してきたことこそが、技術者としての基礎能力だと思う。
工場へのサイバー攻撃
工場などのネットワークは、基本的にインターネットとは切り離して使うのが原則である。設備系のネットワークは大抵がそうなっている。遠隔監視でインターネットに接続したいと提案しても、セキュリティの問題で却下されることが多い。遠隔監視システムを入れないと、何かあれば、現場へ行く必要があるので、できる限り入れておきたいのだが、却下する方の事情もよくわかる。今や、インターネットに接続していれば、富士通やNECといったIT企業でもハッキングされるからだ。
侵入ツールはネットで買える、機密漏洩の厳しい現実と無防備な企業の実態という記事を読むと、絶対にインターネットには接続したくない、という工場関係者も多いはずである。
リレーコンピュータがまだ動いているとは
世界最古級のコンピュータを動かし続けるCEの挑戦という記事には、素直にすごいなあ、と感心した。
リレーコンピュータを動かせるように保守し続けているというのである。私もリレーコンピュータは使ったことも見たこともない。それもそのはずで、ここで動かしているリレーコンピュータは、1959年製造と言うから、私と同じ年である。
今さらリレーコンピュータを動かし続けることに何か意味があるのか、というと難しい。リレーによる論理回路など、今の時代、全く使われていないからだ。
でも、世界最古級のコンピュータを動かし続けることができる技術資産が残っているという誇りは、大きいと思う。
運用時に起こる「AIモデルの陳腐化」への対応:運用は難しい
運用時に起こる「AIモデルの陳腐化」への対応という記事を読んで、AIもやっと運用フェーズに入ったのか、と思った。新しく作ったシステムが華々しく報道される。でも、本当に重要なのは運用フェーズである。運用では、いろんなことが起きる。その中で、かなり大きな課題は劣化問題である。ハードウエアの劣化はもちろん、利用者増による性能劣化や、最近の最大の課題であるOSのパッチへの対抗、新しいセキュリティ問題への対応など、いろんなことが、全て、当初想定していたシステムを劣化させる原因になる。
AIの場合は、モデルの陳腐化という劣化現象があった、ということだろう。こうした劣化問題にどう対応するかは、ケースバイケースだが、対応手段は、設計時に考慮しておかないと、にっちもさっちもいかなくなる。新しい技術だけに、こうしたノウハウの蓄積が重要なんだろうなあ。
単体テストツールCppUTest
組み込みソフトウエアのテストにCppUTestを使っている。そもそもは、テスト駆動開発による組み込みプログラミング ―C言語とオブジェクト指向で学ぶアジャイルな設計という本に触発されてのことである。
例にあるような、LEDドライバーなどのテストを、この手法でやるのは大変だし、結局、実機でしかテストできないことも多く、実行には移せなかった。
しかし、世の中が変わり、ハードウエアに近いレベルのドライバーは、マイコンメーカー提供のものを使うようになって、少しテスト戦略を変えた。ドライバーそのものは、やはり、従来通り実機でテストする。しかし、このドライバーを使ったソフトウエアは、CppUTestを使うことにした。
メーカー提供のドライバー関数をモックでシミュレートし、PC環境でテストするのである。
最近の組み込みのコンパイラは、大抵、GCCなので、PC環境で同じソースをコンパイルしても、コンパイルエラーが出ることはほとんどない。そんなに凝ったソフトウエアも作らないので、機能試験なら十分にPC環境でテストできる。
マイクロチップ社のコード・カバレッジ・ツール:有償らしい
ソフトウエアのホワイトボックステストをする際に必要なツールがコード・カバレッジ・ツールだ。C0とかC1とか、テストのカバレッジの定量基準もある。でも、実務上重要なのは、C0とかC1とかの数値を100%にすることではない。とても、ありえないようなテストパターンを追加しないと100%にならないことが多いからだ。そんなことに時間を費やすなら、非機能要件のテストに時間を費やす方が、品質に貢献すると思う。
実際には、実行されたコードを見て、エッ?ここがテストされてないの?と開発者が気づくことで、大きなバグを免れるというパターンが一番有効なのではないか?と思っている。
でも、組み込みでは難しい。どの経路を通ったかというログを、実メモリーに残し、それをツールが吸い上げ、表示するという複雑な処理が必要だからだ。マイクロチップ社が、MPLAB Code Coverageというツールを発表した。是非使いたいと思っていたら、有償オプションだった。しかも、無料で一定期間お試しという評価版もない。直販ショップの価格で、9万円弱なので、ホビー用途には使えない。小さな企業だと、何も評価せずに、とりあえず買っておこうというレベルの金額でもない。せめて、評価版を用意してほしい。
磁気テープの新製品:相変わらずしぶとい
磁気テープなど、昔のモノか、というとそうではない。それどころか、富士フイルムが「LTO-8」の磁気テープを発売、最大容量は12TBによると、新製品まで出たようだ。バックアップ用途で考えると、バイト当たりの単価が安いし、技術的にも長期保存が可能だからだ。