トランジスタ技術3月号の特集は「STM32Fマイコン教科書」:ビーム・フォーミング実験が使いこなしの参考になる

 トランジスタ技術 2020年 3月号の特集は「世界スタンダード!STM32Fマイコン教科書」。組み込みMCUのコアのデファクトはArmである。そして、そのArmコアのMCUの中で、個人で最も使いやすいモノの1つがSTM32Fである。開発環境が無償だし、何せボードが安い。
 今回の特集は、そのSTM32Fの特集である。STM32Fだけでなく、STM32シリーズの特徴を簡単に紹介している記事が、意外に参考になる。あとは、例によって、開発環境、Arduino/MicroPython/mbedという定番の記事。
 最後の信号処理編は、ビーム・フォーミング実験。MEMSマイクの信号をI2SでDMA転送し、内臓のDSPで信号処理し、USBオーディオやD/Aへ出力する。最近の開発環境がいくら優秀でも、こうした構成の設定と信号処理ソフトウエアの使いこなしは難しい。それを実例で見ることができる。本例と同じ使い方でなくても、DMAを使いたいとかの例として参考になると思う。

Interface3月号の特集は「飛行・走行・航行 ドローン&ロボ制御 」:誌面は数式だらけ

 Interface(インターフェース) 2020年 03 月号の特集は、「飛行・走行・航行 ドローン&ロボ制御 」。飛ばしてみました、動かしてみましたという特集ではない。ちゃんとモデル化を扱った特集なのである。
 たとえば、ドローン。モデルベース設計ということで、まずはモデルの式が出てくる。当たり前だが、モデルの式は、行列のオンパレードである。そして、このモデルを、MATLAB/Simulinkでシミュレーションするのである。解説は、うまく端折られているので、何となく理解できる(というか、できた気にさせてくれる)。ソフトウエアの実装も、PID制御のソースコードが解説される。
 走行の方も負けていない。位置の推定などにカルマン・フィルタを使うということで、こちらも行列のオンパレードである。
 数式ぎらいの人にはお勧めできないが、式そのものはそんなに難しいわけではないので、概要を知るには、面白い特集だ。技術雑誌にしかできない特集といえる。

Interface 2月号の特集は「組み込みコンピュータ技術512」:本誌お得意の事典記事

 Interface 2020年 02 月号の特集は、「組み込みコンピュータ技術512」。本号でInterface誌は、通巻512号らしい。512号というコンピュータ技術者以外にとっては中途半端な号数で記念号を発行するあたりが、本誌らしい。しかも、記念のTシャツまで作るようだ。
 それはともかく、本号は、コンピュータ256とデバイス256に大きく分割し、それぞれの分野で、基本電子部品16のように、事典形式で基本的な技術を紹介している。本誌お得意の記事であり、組み込み技術を満遍なくカバーしている。じっくり勉強するというよりは、少し時間のあるときに眺めて、技術分野を広げるという使い方に最適だと思う。

Interface1月号の特集は「定番ESP32マイコン技術百科」:本誌お得意の情報満載

 Interface 2020年 01 月号の特集は、「定番ESP32マイコン技術百科」。こんなにいろんなボード、いろんなモジュール、いろんなライブラリー、いろんな開発環境、いろんなOSが対応しているのか、とびっくりする。ESP32マイコンは、格安Wi-Fiモジュールのマイコンとして有名でありながら、マイコンそのものの実力が語られることは少ない。こうした情報に加え、プログラム実行速度やメモリ読み書き速度の記事もあり、ESP32をマイコンとしてつかって見ようという時に参考になる情報が満載である。

トランジスタ技術12月号の特集は「74ロジックで超入門!」:今さら74シリーズとは・・・。でも懐かしい

 トランジスタ技術 2019年 12 月号の特集は、「74ロジックで超入門 FPGA×RISC-V開発DVD」。74ロジックというのは、昔のデジタル技術者であれば、必ず使ったであろうロジックICのデファクトスタンダードである。昔のデジタル技術者であった私は、主要な品番は今でも覚えているし、中には、ピン配置まで覚えているモノもある。
 この時代に、74シリーズでロジック回路を入門するというのは、さすがに時代錯誤だろうと思ったが、昔のデジタル技術者である私は、懐かしさのあまり、本屋で特集名を見ただけで、中身も立ち読みせず、そのまま買ってしまった。
 記事を読んで思ったのだが、言語による設計は、自由度が高すぎて、何をどうすればいいかわからない。その点、74シリーズというよく使われるロジックブロックで設計する方が、実はわかりやすいのかもしれない。このあたりは、さすがに初心者ではない私にはよくわからない。
 DVDには、74シリーズの規格表も収録されている(紙の本をスキャンしたようで、見づらいのが欠点だが)。この規格表ではないが、74シリーズの製造元であったTIのデータシートはよくできていて、トランジスタの等価回路も掲載されていた。デジタル出身の私は、このデータシートの等価回路を見て、トランジスタ回路を勉強したものだった。

Interface 12月号の特集は「注目オープンソースRISC-Vマイコン」:本誌独自の切り口

 Interface 2019年 12 月号の特集は「注目オープンソースRISC-Vマイコン」。32ビットマイコンのデファクトがArmになってしまった現時点で、その対抗馬として唯一の可能性がありそうなマイコンである。
 少し前までは、FPGAに実装して動かすということしかできなかった。ところが、本誌によると、STM32F103とピン互換のRISC-Vチップが出現し、Sipeed社がそれを使った500円のボードを発売した。それによって、状況はかなり変わってきたようだ。
 今までRISC-Vの特集といえば、FPGAにどうやって実装するかというのが中心であった。ところが、本特集では、こうした入手しやすいRISC-Vボードの紹介や、クラウド上でRISC-Vを実験してみる方法など、内容は盛りだくさんだ。もちろん、FPGAへの実装も紹介されていて、本誌お得意の、大図鑑ということで、いろんな実装を紹介している。さらには、実際にチップを作るには、どんな工程があって、どんなツールが使えるのか、という紹介まである。
 RISC-Vの世界が少し広がっていることを実感できる特集である。

今さら小松左京のSFを読む(つづき)

 小松左京のSFを読んで少しびっくりした、という話を前に書いた。その後で、継ぐのは誰か?というSFも読んだのだが、これにも驚かされた。コンピュータネットワークが、かなり重要な要素として取り入れられているのである。もちろん、古いSFなので、今のインターネットとは異なる。でも、かなり正確にその本質を理解し、書いていることがわかる。私が本書を読んだのは、今から30年以上前のことである。その時には、たぶん、このコンピュータネットワークの部分は、あまり理解していなかったのだと、今になって思う。

ハードウエアハッカー:電子回路以外へも興味が広がる

 もの作りが好きだ。そのため、定年退職後は、回路設計を任せてくれそうな会社に転職した。久しぶりに、自分で全ての回路を設計し、明日、実装基板が到着する予定だ。
 そんな私にとって、ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険という本は刺激に満ちていた。優れた技術力というのは、好奇心と実行力から生まれるということが、よくわかる。
 単に電子回路を設計するだけでなく、深圳でのモノ作りを作業者と一緒に進め、プラスチック筐体の設計に手を出す。1つのものを作り上げるための情熱は、もの作りの原点だろう。

基本電子部品大事典:電子部品の特徴が網羅的に解説されている

 転職して、管理職でなくなったので、久しぶりに、自ら製品設計をしている。電子回路は、理論とともに、電子部品の知識が重要だ。理想的なRやCは存在しないので、用途に合わせていろいろな電子部品が存在する。
 これらの使い方は、現場では、OJTによって伝承されてきた。たとえば、部品は周囲温度によってディレーティングを考慮しなければいけないとか、電解コンデンサは低温では電解液が凍結するので役に立たないとか。こうした雑多な知識が網羅されたのが、基本電子部品大事典 (トラ技ジュニア教科書)だ。久しぶりの現場復帰で、この本を読んでみて思ったのは、自分が初心者だったときに、この本に出会っていれば、あんな失敗とかこんな失敗とかをせずに済んだのになあ、ということである。
 体系的ではない。トランジスタ技術の記事を再編集したものだからだ。でも、もともと、部品の知識というものは、理論と違って、雑多な知識の集積である。
 トラ技Jr.教科書というシリーズなので、ベテラン技術者は手に取らないかもしれないが、たぶん、自分の不得意な分野では、参考になることも多いと思う。少なくとも、私は、この本を読みながら、過去の自分の設計ミスを思い出し、先輩からの口伝を懐かしく思い、そして、新たな知識も学ぶことができた。初心者からベテランまで、電子回路に携わる技術者に勧めたい。

国際ブックフェアって中止だったんだね

 「出版先進国」日本で国際ブックフェアが再開されない不思議を読むまで、中止になっていたことを知らなかった。
 私は、まあ本好きである。というか、電子工作、旅行、そして本くらいしか趣味はない。そういう意味では、国際ブックフェアは楽しい催し物であった。聞いたこともないような出版社から、へ~こんな本が、というような本を見つけることができるからだ。本を安売りしているブースもあるし、講演も楽しい。
 最近、案内が来ないなあ、と思っていたら、中止になっていたとは。日本人の本離れが、端的に現われたような話である。