中国製TVは「シンプルの極み」、その利点とはという記事を読んで、今や日本は製品化力でも中国に負けていると実感した。パネルやチューナーという基幹部品は優れた部品を使いながらも、仕様をしぼることで回路構成をシンプルにし、TV性能に影響しない部分では安価な部品を使うこことによって、安価な製品を実現しているのだ。
構成をシンプルにすること、これが製品開発にとって最も重要なことである。プロの技術者とそうでない技術者の違いは、ここにあるのではないかというくらい重要なことだ。
価格競争に巻き込まれないための高機能化路線によって、日本の製品開発者は、最も重要なシンプルに設計するという技術力を失っているのかもしれない。
カテゴリー: 開発業務
低温で動作しなかった試作品の思い出
前回、-40℃で動くってすごい、という話を書いた。それには理由があって、若い頃、-15℃で動作させることができなかった経験があるのだ。
PCなどでは、CPUを冷却することが重要なので、高温側のことを気にすることが多い。でも、低温側も、実は難しい。かつて勤務していた会社では、動作保証範囲に対し、15℃のマージンを要求していた。0~40℃という製品だったので、-15℃で動作させる必要がある。でも、これが動かないのだ。原因は、電源に入れた電解コンデンサの液が凍結して、インピーダンスが高くなり、電源が安定しなかったのである。使っていた電解コンデンサよりも、動作保証範囲が広くESRが小さいものを選び、再度試験をしたら、大丈夫だった。
すぐにこのことがわかったのかというと、そんなことはない。技術者としてひよっこだった私は、どうすればいいのか、さっぱりわからなかったのである。先輩技術者に相談したところ、基板を一目見て、この電解コンデンサに冷却スプレイをかけてみろ、と言われた、常温で動作していた基板が、解コンデンサに冷却スプレイをかけるだけで、動作しなくなったのである。その時に、電解コンデンサの液が凍るという話を聞いたのだ。経験の差というのは大きい。
この時、回路技術だけではモノ作りはできず、部品の特性をよく知ることが重要だということを知った。前に書いた部品知識の重要さにもつながる話だ。
24V電源を備え-40℃で動作する産業用ラズパイ:-40℃はすごいなあ
24V電源を備え-40℃で動作する産業用ラズパイ、ハーティングがアピールを読んで、-40℃はすごいなあと感心した。高価なシステムならともかく、価格は約3万5000円というから、産業用途としえは安価な部類に入る。
ハードウエアハッカー:電子回路以外へも興味が広がる
もの作りが好きだ。そのため、定年退職後は、回路設計を任せてくれそうな会社に転職した。久しぶりに、自分で全ての回路を設計し、明日、実装基板が到着する予定だ。
そんな私にとって、ハードウェアハッカー ~新しいモノをつくる破壊と創造の冒険という本は刺激に満ちていた。優れた技術力というのは、好奇心と実行力から生まれるということが、よくわかる。
単に電子回路を設計するだけでなく、深圳でのモノ作りを作業者と一緒に進め、プラスチック筐体の設計に手を出す。1つのものを作り上げるための情熱は、もの作りの原点だろう。
発注者のランキングという発想が面白い
発注者ランキング、受注者が5つの評価軸で採点という記事は、発想が面白かった。ベンダー側の評価は、よく公開されている。IBMとかNECとかが評価されているレポートだ。この記事は、そうではなく、発注側のランキングである。日経コンストラクション関係の記事なので、建築関係の発注に関わるランキングだ。
建築にせよ、ITシステムにせよ、発注側の実力の有無がプロジェクトの成功/失敗を分ける。そういう意味で、こうしたランキングは面白い。評価の高いところに学んで、発注者側の実力も向上してほしいものだ。
現物を知り尽くす
なぜ、モジュラーデザインがうまくいかないのか?に、エンジン設計の「匠」のエピソードが載っている。エンジンのシリンダーヘッドを触っただけで、「ジャーナルの5番ボルトが緩んでいる」ことがわかったというエピソードだ。これは、いすゞ自動車のエピソードなのだが、同様なエピソードは、いくつか聞いたことがある。本当かどうかは知らないが、でも、現物を知り尽くすと言うことは、こういうことなんだなあ、と思えるようなエピソードだ
先進技術の導入前に基礎を学び直せ:どの世界でも同じなんだなあ
先進技術の導入前に基礎を学び直せという記事は、建築関係の技術者の意見だ。でも、組み込み技術からみても、同じだ。たぶん、どんな技術でもそうなんだろう。設計というのは、設計するものが使われる現場を知ってこそのものである。そのためには、基礎が重要というのはその通りだ。
自分で手を動かして体得したスキルの価値
知識として知っているのと、実際にできることの差は大きい。これがわかっていないのが、大企業の研究者だという話は前回書いた。
ただ、実際には、自分で手を動かして体得したスキルの価値が向上しているという(https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00058/070900010/?P=2)。
いいことだ。まあ、とは言っても、単なる知識と体得スキルの違いを見分けることのできる経営者がいなければ、研究所のような部門でも、大企業で偉くなるのは、やっぱり技術よりも政治力という現状は変わらない気がする。本当に実力のある若手技術者は、海外に行こうということか・・・。
プログラミングできないソフトウエア研究者:大企業の実態
ある大企業の研究所ではソフトウエア関連の研究開発を進めているにもかかわらず、研究者はプログラムを書こうとせず、仕様書だけ書いてプログラミングをITベンダーに丸投げしていたという(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00148/070400068/?P=2)。手を動かさない研究者がまともな成果を出せるはずがない。
この内容を読んで、当社のことか、と思った大企業の研究者も多いはずだ。私の前職の大企業の研究所でも同じだった。研究費の大半は、外注費だったのである。技術開発とは、技術開発の仕様書を書くことと思っている研究者だらけだった。そして、お金を払って、外注先の企業の技術を向上させていたわけだ。どんな世界でもそうだが、技術の世界では、技術というのは、イコール技術者であることが多い。外注してソースコードを受け取ったって、そのコードを書ける技術者がいなければ、その技術を開発したことにならない。まあ、大企業の偉いさんというのは、現場経験のない人ばかりなので、そんなこともわかっていないのだろうけど。
F1でホンダが13年ぶりの優勝:トップの世界では一度撤退すると復帰するのに時間がかかる
私は、ホンダが最盛期のころに、F1を見ていた。セナというドライバーが生きていて、地上波でレースが放送されていた時代である。
あの頃のホンダは敵なしであった。それが一旦撤退すると、今度は、再度優勝する実力をつけるまでに、とんでもない期間が必要になる。一流の世界というのは、そういうことなのだろう。
予算がないからといって、一旦撤退すると、その間にもライバルは進歩しているので、なかなか追いつけないのだ。最先端の技術は買えるモノではない。自ら開発するしかない。撤退という空白の時間を取り戻すことの難しさを教えてくれる。