AIと技術者

 AIと技術者の関係。少し前に、悲観論楽観論に関する感想を書いた。でも、結局は一般論ではなく、技術者が身につけるべきスキルは何か、ということを考えることが重要だ。一般論の通りの技術者人生を生きるわけはないからだ。
 Rubyの父 まつもとゆきひろさんが示す、AI時代の若いエンジニアに必要な“4つのスキル”は、そういう意味で一人一人の技術者に参考になるアドバイスである。

AIが普及しても、ITエンジニアは増える?

 前回、AIに仕事を奪われる心配をしている技術者が多いという話を書いた。一方で、

コーディングは速くなった、だが「週7時間がムダ」に GitLabが指摘する「AIパラドックス」の正体というような話題もある。AIが普及しても、ITエンジニアは増えると予測されているらしい。まあ、新しい技術が出てきた時には、いろいろな影響があり、それに対していろいろな意見もあるものだ。

AIが仕事を奪う

 エンジニアの66.2%が、AIに仕事を奪われる不安を感じると回答という状況は、なかなか厄介な状況だ。技術のトレンドが変わり、たとえば、C言語ではなくJAVAで、というようなことはよくあった。ところが、AI技術者というものが登場し、人間の技術者を淘汰するという状況は、想像もしなかった。まあ、私は、既に、仕事としてコーディングはしていないので、AIに仕事を奪わわれるという不安はないが、現役の技術者は大変だろうなと思う。C言語からJAVAへという話なら、新たにJAVAの勉強をすればいい。しかも、新しい言語を学ぶさいには、既に学んだことが生きてくる。でも、仕事そのものがなくなるというのは、つらい。

ソースコードから要件定義

 突然のマイコンEOL…… 置き換えの難所「要件定義」を2週間で代行は、驚きの内容だ。今まで製品で使っていたマイコンが突然EOLになる。よくある話だ。現場には大迷惑なので、メーカーは、EOLには慎重になってほしいが。
 とはいえ、そうなった時のサービスを開始したという。少し引用する。

客が既存のソースコードを用意すると、ミラクシアは「マイコン置き換え開発計画書」「マイコン書き換え資源割当設計書」「マイコン推奨品種提案書」の3種類のドキュメントを2週間以内に納品する。

 本当にこんなことが可能なのだろうか?本当にできるとすれば、びっくりだ。

ネクスペリア問題が解決のめど立たず?

 ネクスペリア社の問題について、オランダ政府と米国政府で一応の妥協ができているにもかかわらず、ネクスペリア問題は解決困難? 中国法人の支払い拒否でウエハー供給を停止という記事によると、中国法人の対応の関係で解決していないという。
 半導体供給の問題で、車メーカーの製造停止のニュースもあるが、製造の問題でなく、なにか政治的な部分でのもめごとが起因となると、やっかいだろうなあ。

AIが代替できる技術者は・・・

 AIの活用により技術者が削減されるという話がある。コードはもう書かない、残る仕事は……「バイブコーディング」の暗い代償によれば、AIが代替できるのはジュニアレベルの技術者で、シニアレベルの技術者は必要なのだという。
 この記事の中で重要なのは、ジュニアレベルの技術者の仕事をAIが代替することで、ジュニアレベルの技術者のスキルが上がらないということだ。技術者も人間なのでいつかは開発できなくなる。今のAI活用は、10年後には、開発の破綻を生むのかもしれない。

IntelとNVIDIAの協業

 米国政府から支援されたりで、Intel社はそんなに苦境なのか?と思っていた。Intel「迷走の構図」 NVIDIAとの協業にも浮かぶ疑問符は、その打開策として経営陣が打ち出したNVIDIAと協業という案は、実際にはうまくいかないよ、という技術面からの解説である。
 何となく、CPUのIntelとグラフィックのNVIDIAが協業すれば、素晴らしいチップができる気がする。でも実際には、それぞれのコアを統合するためのバスのアーキテクチャが違いすぎて、簡単ではないという指摘だ。
 バス周りの技術は、地味に見えて、実はトータルの性能および信頼性を実現するための最重要技術だったりする。技術はお金だけでは解決できない。

日本はいつまで組み込み技術者を養成できるのか?

 20年でCPUコアの巨人にのし上がった「Cortex-M」という記事は、前の方は確かにCortex-Mの歴史が振り返られていて、おもしろいのだが、後ろの方で、違う話も含まれている。
 今の組み込みは、昔に比べて、必要とされている知識が増えているという筆者の感想である。確かに、私の時代は、組み込みをやる以上、アセンブラを使えることは必須であった。開発がC言語になっても、C言語のソースコードでブレイクできず、コンパイル結果を見ながら、アセンブラレベルでブレークをかけたりという時代もあった。
 一貫して、マイコンを使いこなすという技術が求められていた。でも、今では、クラウドであったり、AIであったり、マイコンだけではない知識も必要となっている。筆者と同じように「いつまで日本の企業はこうしたエンジニアを擁して組み込みシステムの開発を続けられるのだろう?」という疑問がある。

昔DSPを使った話

 ロングランの本格DSP、TI「TMS320」登場に至る長い道のりという記事を読んで、昔の開発を思い出した。TIのDSPを使ったことはないのだが、この記事の中に出てくるμPD7720というDSPは使ったことがある。この記事によるとモデムで使われたらしいが、私が開発したのは全く異なる用途であった。ある計測値を基に補正計算をしなければならないのだが、その計算を一定時間で終わらせる必要があるという、まあ、組み込みらしい内容だ。その計算が、基本的には、積和演算で実行できるので、DSPを使うことにした。今から30以上前のことだ。
 当然、開発はアセンブラである。8080とか6800などの、いわゆるマイコンとはかなり異なる命令体系であり、いろんなテクニックを駆使しないと要求時間内に処理を終わらせることができない。たしか100ステップくらいの開発に1か月以上かかっている。命令体系の理解とか、開発環境になれることとかの準備にプラス2か月必要だった。
 でも、いわゆるマイコン以外のソフト開発でも開発できるという自信がついた開発であった。

ホンダの関西拠点:10年後になくならなければいいが

 ホンダが大阪の電機人材に的、人員5倍計画は、関西の電機業界の不振を反映したような話である。関西で引き続き働きたいいベテラン技術者にとっては、いい話のように思える。
 でも、である。本社がない会社の開発拠点というのは、いつなくなっても仕方ない、ということを理解して転職する必要がある。
 私自身は、関西の大手電機メーカーの東京の開発拠点で仕事をしていた。東京にも拠点を作るんだということで、大阪出身の私が東京へ転勤して作った拠点である。でも、実際には、10年ほどで、当初の目的が終わり、その後は、常にリストラの対象であった。どんどん縮小したのである。
 ソフトウエアというのは、進化の激しい領域だ。今は、技術者が必要ということで、関西拠点をしっかり作っていこうと思っているのだろうが、10年後はわからない。
 問題は、ベテラン技術者が10年後にリストラにあった時には、転職活動が極めて難しくなるという事実である。まあ、今や、どこにいても、そんなものだろうから、今回の話だけではないだろうけど。