耐放射線PHYとMCU:マイクロチップ社がねえ

 宇宙船や人工衛星内もEthernet、米マイクロチップが耐放射線PHYとMCUというのは、少しびっくりした。いくらなんでも、耐放射線のチップとは、かなり市場が限られているだろうなあ。とは言っても、こういうニッチ製品はマイクロチップ社のお得意領域であることも確かだ。耐放射線といっても、重要なのはパッケージなので、PHYやMCUを再設計する必要はない。パッケージの種類はそんなに多くないので、一旦、パッケージを開発してしまえば、使い回しがきく。そういう意味では、うまい切り口かもしれない。

量子暗号通信がとうとう実用化されるのか

 量子コンピュータの実用化で、素数に頼った現在の暗号化方式が使えなくなるかも、ということで、注目されているのが量子暗号通信だ。2兆円市場に先手、東芝が量子暗号通信を事業化へによれば、とうとう実用化される段階に来たようだ。
 でもまあ、東芝という会社は、前に書いたように、経営面では本当にバカが多いが、技術面では優れた会社だ。技術者が頑張っている間に、まともな会社に更生することを願っている。

IoTプラットフォームによるアプローチは間違い:同感

 IoTという名前だけが一人歩きして、実際の成果はなかなか報告されていない。IoTプラットフォームによるアプローチは間違いというのは、同感である。IoTというバズワードにITベンダーが飛びつき、いろんなプラットフォームを作ってきた。誰もがプラットフォーム商売こそが儲かると思って、むらがったわけだ。
 でも、現状のIoTでできることは、最適化によるコストダウンだけである。付加価値の向上などは、できていない。つまり、大事なのは、かけるコスト以上のコストダウンメリットを受けられるかどうかで、この世界に、大げさなプラットフォームは似合わない。

ノーベル賞の吉野さん:特許収入で会社を儲けさせていたとは・・・企業での研究者の鏡

 ノーベル賞を受賞した吉野さんは、企業の研究者である。企業出身で大学に移って研究を続けた人は多いが、企業にそのまま留まったのは、田中さんと吉野さんくらいではないだろうか。
 吉野氏らノーベル賞受賞の「リチウムイオン電池」という記事を読んで驚いたのは、基本特許を取得し、そのライセンス収入で自分が所属した企業を儲けさせたということである。企業の研究者の鏡とでもいうべき人だ。でも、企業が儲けた分の中から、どれだけの報奨金をもらえたのだろうか?知財は本来、個人のものだ。職務発明ということで、企業に権利を譲渡するのだが、その知財によって儲けたお金は、個人にも還元されるべきである。
 青色LEDの中村さんも企業を儲けさせたのに、その見返りの少なさに嫌気がさして大学へ移った。技術の優位性は、すぐに失われ、同じようなものをより安い国で作られてしまう。結局、技術を正当に守るためには、知財しかない。

オペアンプが今でも進化しているとは

 米ADIで働く日本人技術者に聞く、オペアンプの地道な進化という記事は、技術というものの継続性の重要さを教えてくれる。オペアンプというのは昔からあるデバイスだ。アナログ回路を勉強するときには必須のデバイスであった。
 そのオペアンプの開発が今でも継続されているらしい。CMOSでも高耐圧のものを作るとか、いろんな進化があるようである。派手さはなくとも、こういう地道な開発は、メーカーにとってのコアだろう。

アナログオシロ テクトロの2465:懐かしいが、すぐにデジタルオシロの時代になってしまった

 オシロは、組み込み技術者にとって、JTAGデバッガの次に重要なツールである。最近のマイコンは、良く使う周辺回路を内部に取り込んでいて、しかも評価基板、サンプルソフトも充実しているので、私が開発している程度のマイコン基板だと、オシロを見ないと解決できないことというのは、昔に比べて少なくなっている。
 昔のマイコンは、CPU機能だけしかなく、ROMやRAMですら外付け回路が必要だった。なにかというと、オシロの出番だった。デジタルオシロスコープの歴史や種類に写真が掲載されているアナログオシロの2465は、私も使っていた。このオシロのツマミや配置が、私に刷り込まれてしまって、他のオシロが使いにくいと思ってしまうほどだ。
 とはいえ、マイコンのソフトがらみのデバックでは、アナログオシロは使いにくく、結局、ワンショットのトリガをかけられつデジタルオシロに早々に乗り換えることになる。後には、ロジアナとオシロが連携して、ロジアナで複雑なトリガをかけて、その時の波形を見たりという高機能なものが登場した。
 その後は、どうなったかというと、マイコンの高集積化が進み、そんな高機能なツールを使わなくても、基板を開発できるようになった。そもそも、マイコンのバスがマイコンチップから出てこなくなったので、今、観測するのは、I/F信号くらいだ。時代というのは、変わるモノだ。

他者の成功から学ぶ

 ナイキが「Obeya」を使いこなし、日本企業は「大部屋」を知らないを読んで少し反省した。その部分を引用する。

2019年3月期(2018年度)の決算で、トヨタは30兆2256億円の売上高を計上し、2兆4675億円の営業利益をたたき出した。原価改善額も大きな数字だ。これらの数字を見て、日本企業の経営者は「トヨタだからできること」と口をそろえる。これに対し、海外の成長企業の経営者は、「トヨタはどうしてこれほどの好業績を出せるのか」と真剣に研究しているのである。

 なるほどね。どんな記事を読んでも、あれは関係のないことだ、と思えば、関係なくなる。でも、本当に、改革したけけば、そこから学ぼうとしなければならない。そのままマネはできない。「トヨタだから」できることがあるからだ。でも、全てがそうではない。最初から、無理だと思えば、何事もできない。
 これは、会社だけでなく、個人でも言えることだろう。「誰々だから」ということは多い。でも、そうでもないこともあるだろう。特に、個人の行動など、そんなにバリエーションはない。会社の資本金なら、何桁も違うだろうが、人間の才能が何桁も異なることは考えられない。ちょっとした差が、大きな成果の差になる何かがあるのだと思う。

やっぱり量子コンピュータは理解できない

 量子コンピュータのプログラミングを体験、その難しさに震えたという記事を読んで、やっぱり量子コンピュータは理解できないと、あらためて思った。量子コンピュータのプログラミングをしている画面という写真がるが、これがプログラミングの画面とはとても思えない。まあ、もう60歳を過ぎた私に、量子コンピュータのプログラミングが必要なことはないだろうから、知らなくても何の問題もないのだが。でも、コンピュータというから気になる。いっそのこと、コンピュータという名前をやめてくれたら、私とは全く縁のない技術ということで諦めがつくのだが。

インテルの10nm FPGA:旧アルテラの技術にプロセス技術の支援

 インテルのFPGAは、M&Aした旧アルテラ社の技術を引き継ぐモノだ。アルテラがインテルに買収された後で、アルテラのセミナーに行った時に、旧アルテラ社の技術者が、インテル傘下に入ったことで、ソフトウエア開発力が向上した、と言っていた。FPGAでは、チップそのものだけでなく、開発ツールのできが大きな要素を占めているので、なるほど、と思ったものだ。今回、米インテル、10nm FPGAのエンジニアリングサンプルを出荷開始というニュースを見て思ったのは、やはり、こうしたプロセス面で最短のものを使えることこそが、インテル傘下に入った最大のメリットなんだなあ、ということだ。ソフトウエア開発力も確かに重要だが、10nmプロセスの新FPGAという方がインパクトがある。

ファーウェイが独自OSはアンドロイドOS代替以上の野心的なOS

 前回、アンドロイドOS対抗としてのファーウェイの独自OSというニュースに関する感想を書いた。でも、組み込みOS業界の黒船となるか、ファーウェイの「HarmonyOS」という記事を読むと、目指す姿はそれだけではないらしい。かなり野心的な内容のOSである。経済新聞からの観点と、技術情報からの観点とでは、同じ発表に関する記事でもこんなに内容が違うんだ、とびっくりした。
 それにしても、ファーウェイというのは、すごい技術のある会社だと、改めて感じた。