シニアに優しい旅のコツ:中高年のための旅のヒントが満載

 旅行のノウハウ本というのは、旅行の達人の本が多い。若い人であれば、そういう本を読んで、自らも旅行の達人になるというのもいいであろう。ところが、中高年にとっては、そういう本はあまり役に立たない。いまさら、旅行の達人になるよりも、楽に楽しく旅行を楽しみたいからである。
 以前紹介した「50才からの海外旅行術」はツアー旅行の楽しみ方を書いた本であった。「シニアに優しい旅のコツ」は、同じくツアーの楽しみ方を主としているが、もう少し広い範囲でコツについて書かれている。
 なるほど、と思ったところを少し引用してみたい。
 まずは、パッケージ選びのチェックポイント

 シニアにとって無理のないスケジュールになっていなかを知るためには、次のチェックが必要です。
・「1都市2泊以上」の原則が守られていること
 (後略)

 食事について

 どういうわけか日本人は泊まっているホテルのレストランでのランチやディナーを嫌うようです。ガイドブックに載っている有名レストランとか地元の名物料理店とか、あるいはやっぱり日本食でなくちゃ、といいながら出かけます。(中略)
 ひとつの場所に2泊以上するときは、一食はホテルのレストランでゆっくりと食事してみてはどうでしょうか。

 旅行について

 旅はもともとお金がかかるものです。
 (中略)
 旅を楽しむということは、いかに時間とお金を上手に使うかということでもあります。

 中高年のための旅のヒントをまとめて読めるという意味では、参考になる本である。現時点では古本でしか注文できないようだ。

 

枝雀らくごの舞台裏:枝雀ファン必読の本

 落語作家で生前の桂枝雀とも親しかった著者が、それぞれの演目のちょっとした解説と、それにまつわる桂枝雀の思い出について書かれた本である。枝雀落語の中から48の演目について解説されている。
 例えば、私の大好きな演目の1つである「代書」から少し引用してみる。

 この話の主人公である松本留五郎は枝雀落語の・・・・というより上方落語界、いや我が国落語界のスーパースターである。
 大阪市浪速区日本橋3丁目26番地の生まれで年齢は46歳。父は20年前に亡くなったは母親は健在。生年月日は年度こそ不明だが1月1日。本籍地内の小学校を2年で中退。職業は「ポン」。米菓を製造販売してを立てていたわけである。

 ここだけで「代書」のエッセンスが語られつくされている。他の演目の解説も、枝雀落語の面白さを語りつくしている。さらにはその演目の音源まで紹介されているという親切さである。
 桂枝雀だけではなく、師匠の桂米朝や弟子の思い出も語られていて非常に面白い。作品だけの紹介ではない面白さがある本である。
 一方、各演目で時期による芸の違いの解説などもあって、既に持っているDVD以外にも購入したくなってくるという副作用がある。ファンにとって危険な本でもある。
 ただ惜しむらくは、目次の部分で各演目のページが振られていないので、演目からその解説をたどるのに時間がかかる。残念である。資料性もある本なのでもう少し丁寧に編集して欲しかった。

 

パーソナルコンピューティングの30年:まさにパソコンの歴史

 日経パソコン創刊30周年特別編集ということで、2013年に出版された本だ。初期の頃からパソコンを触ってきたので、どんな30年だったのだろうという、少しノスタルジックな興味にひかれてこの本を購入して読んでみた。正直言って、読み物としての出来はあまりよくない。日経パソコンの各号の紹介があるという意味では資料集的な要素がある。だが、一方では、その年のトピックスを2ページでまとめた読み物的な要素がある。少しよくばりすぎて中途半端な印象を与えているのである。
 ただ、それぞれの年でどのようなPC関係のトピックスがあったのか、ということを振り返るには良い本にできあがっている。何よりも、古くからパソコンをさわってきた人にとっては、なつかしい内容である。この手の本で、回想的な内容の本はあるが、こうした年度ごとにまとめられた本は意外に少ない。
 組み込み技術者の単身赴任日記の方でも、不定期でこの本の内容から思い出した私の思い出を書いたりしている。たとえば、長年愛用したPC9801に関しては、この記事で触れている。

 

The 500:一気に読んでしまえる面白さ

 裏工作によってワシントンD.C.を仕切っているロビイスト会社に勤めることになった主人公の物語。
 主人公は詐欺師の父親の血を引いて、犯罪行為のスキルも持ちあわせている。そうした犯罪の世界から足を洗うために、苦学してハーバード大学のロースクールに通って、この会社に勤めることになる。その時点では、この会社がそうした裏工作をしている会社であったとは知らない。
 しかし最初の大きな仕事をする時点で、この事実を知ることになる。そうした裏工作に従事する中で、元々持ち合わせていた犯罪行為のスキルを生かしながら、その会社の中で大きな地位をしみるようになっていく。これが前半である。
 ところがその中で、自分が会社のスケープゴートになりかねないということを感知し、そこから逃げ出すために必死の工作をして行く。これが後半である。
 前半と後半とではかなり異なった内容の小説になっている。だが前半のストーリーで、主人公の人生に共感することによって、後半の少し無理があるストーリーを一気に読ませてくれる。解説によると、映画会社が映画化権を取得したということであるが、それも納得である。

 

司政官:短編だけでなく解説もあり読みやすくなった

 日本SFの初期の頃から活躍した眉村卓の代表作である。
 司政官シリーズということで、短編だけでなく長編もある。司政官というのは、人類が宇宙に出て行って、惑星を植民地化している時代の話である。初期の時代は、軍隊が常駐していたが、植民政策が進展する中で、司政官というテクノクラートが惑星運営することになる。その初期の頃から、形骸化するまでの時代の中からピックアップして小説にするという壮大なシリーズものである。それを、統治機構からではなく、統治機構の末端に属して、惑星という現地に住み、統治機構と現地との間で悩む司政官の物語である。現在の会社にたとえれば、まだ市場参入したばかりの国の支店長として現地赴任した本社では部課長級でしかないサラリーマンのような立場とでもいえようか。こういう中間管理職を書かせたら、サラリーマン経験のある眉村卓の得意の分野である。
 この短編集は、従来の短編集とは異なり、いくつかの特長がある。
 まず、著者がこの本に向けたあとがきを収録している。これは眉村卓ファンにとってうれしい。私は、既に、ここに収録されている短編の本を別途持っていたのにもかかわらず、このあとがき読みたさに、本書を購入した。
 従来の短編集は、短編の発表順であったが、この本では司政官制度の年度順で収録されている。この順番で読むことで、シリーズの構成力のすばらしさが理解できる。
 司政官シリーズの世界観とロボット組織は意外に理解が難しいが、これに対する詳しくわかりやすい解説がついている、そのことにより、本短編集を初めて読む人にとって、すぐにこの世界へ没頭できる知識を簡単に得られる。この本で初めて司政官シリーズを知ることになる人たちにもお勧めである。

 

太ももを強くすると「太らない」「超健康」になる:第2の心臓の太ももを鍛える

 太ももは第2の心臓と言われ、毛細血管へ行った血液を心臓に戻すという大きな働きをしている。この筋肉は、瞬発力に必要な筋肉である白筋ではなく、中高年になっても比較的老化を防げる赤筋からなっている。この筋肉をきたえるというのが、中高年からの健康にとって重要になる。
 ただ、やみくもに鍛えるのではなく、目的別にどのように鍛えるか、ということが、この本では具体的に書かれている。しかも、それぞれの運動は、さほどの運動量も時間も必要のないもので、長続きさせることが可能である。私もここで書かれている「反復つま先立ち」という運動を、半年間、ほぼ毎日実行している。
 運動の効果があるかは正直言ってわからない。健康というのは、そういうものだろう。

 

声の網:ネットワーク社会の怖さについて今でも通用する内容

 ショートショートで有名な星新一の数少ない長編小説である。ネットワークによって繋がったコンピューターが自律した行動をとるようになり、ついには神様のような存在になるという話である。古い小説なので、このネットワークによって繋がる手段はインターネットではなく電話網である。ただそれを除けば、今でもネットワーク社会が持つ怖さとでも言うべきものがあぶり出されている小説であると言える。私はこの本を40年くらい前に読んでいる。その時にはこの小説のリアリティーは理解できなかった。そもそも電話網にコンピューターが繋がるということが、まだ一般的には知られていない時代であった。今読んでみると、そこで描かれているコンピューターネットワークによるサービスであるとか、ネットワークが自律的に動くということがどういうことであるか、そうしたことがリアリティーを持って描かれている。 IBMは人工知能を事業にしようとしている。その動きがこの本で描かれている世界の先駆けでなければいいのだが。

 

京都、オトナの修学旅行:少し情報は古くなっているが内容は斬新

 別のプログで書いたのだが、赤瀬川原平展を見に行った。その展示会場で、赤瀬川原平の本として、この本が展示されていた。帯にあるように、「コドモの時は、あんなにつまんなかった」京都を、オトナが行くという趣向の本である。赤瀬川原平なので、旅行ガイドブックにあるような内容ではない。一番最初の訪問地は金閣寺なのだが、そこに「正面の建物は金閣です。金閣寺ではありません。」という立て看板がかかっているということを面白いと感じ、その写真が本に掲載されるのである。
 文化財だから、芸術だから、かしこまって見なければならない、という規制から外れて、面白いものは面白い、美しいものは美しいという感じたことをそのまま対談にしている。中に出ている情報は少し古いが、こうした見方は今でも斬新だと思う。

 

真面目な人は長生きする:真面目な私にとって嬉しい本

 私は真面目な人間である。真面目以外には取り柄がないという、典型的なサラリーマンタイプの人間である。この本はターマンとフリードマンによる1500人を対象とした80年に及ぶ研究を基に、どのようなタイプの人間が長寿なのか、ということについて研究した結果を紹介したものである。
 そのエッセンスを著者のあとがきから引用する。

 その中の重要な発見のひとつは、親や配偶者との関係が安定したものであるかどうかが、その人の寿命にさえ大きな影響を及ぼすということだ。人との絆は、単に心理的な慰めというよりも、栄養や運動に劣らず、生存を支え、命を保たせるために不可欠な要素なのである。
 もう一つの驚くべき発見は、たとえストレスがあっても、仕事に励み、自らを役立てることは、寿命にプラスだということだ。

 結論としては上記の通りなのだが、これらのことについて、詳細に紹介されている。実際の例についても紹介されているので、真面目な人達にとって長生のための参考になるのではないかと思う。
 男にとっては、配偶者との関係というのが非常に重要であるということである。特に離婚というのは10年も寿命短くしてしまうらしい。離婚されないようにしないと大変である。

 

アカマイ 知られざるインターネットの巨人:ビジネス面と技術面の両面を解説

 アカマイという会社は、インターネット技術に関連した仕事をやっている人間にとっては、名前はよく知られている。私もコンテンツ配信のインフラを担っている会社だということは知っていた。が、それ以上のことは知らなかった。そもそも、ネットワーク関連の専門誌やビジネス関係の専門誌でも、この会社のことを取り上げた記事は見たことがない。
 そのアカマイという会社を、知られざるインターネットの巨人という位置づけで、ビジネス面と技術面の両面について解説した本である。
 技術面では、コンテンツ配信で最も問題となるところは何か、それをDNSやPINGなどのインターネットにある仕組みを上手く利用して、その課題解決をしている仕組みが解説されている。インターネットの技術そのものを知らない読者にもわかるように丁寧に解説されているが、それでも全く何も知らない読者が理解するには難しいかもしれない。
 ビジネス面では、そのポジショニングのユニークさがよくわかる。直接の顧客はコンテンツを配信したい企業なのだが、それだけでなくISPにもメリットがあるような形で運営することによって、世界中のネットワークに配信サーバーを配置し、それが自社の強みになるというビジネスモデルである。
 技術面とビジネス面と両面で語らなければ、アカマイという会社が、なぜインターネットの巨人なのかがわからない。その両面を的確に解説してくれた本といえる。