ローマ史再考:東ローマ帝国から見たローマ史

 私のローマ帝国史の知識のほとんどは塩野七生のローマ人の物語によっている。この長い物語で、キリスト教がローマを動かすようになってからは、明らかにトーンダウンしている。なによりも、前後関係がよくわからないことが多いのである。
 本書は、それを、コンスタンティノープルの名前のもととなったコンスタンティヌスからユスティニアヌスまでの東ローマ帝国初期の200年間の歴史を記載している。これを読みながら、そうだったのか、と思うことも多い。この予備知識を基に、ローマ人の物語を再読してみたい。

剱岳-線の記:行動する考察

 新田次郎の「剱岳・点の記」は強い印象を残す傑作である。三角測量点を設置するために命がけで剱岳に登頂成功したら、そこには昔、山伏が置いていった祈祷用の道具があったという話だ。この山伏はいったい誰で、どのように剱岳へ登頂したかを読み解くのが本書である。過去の文献をさぐるだけでなく、今でも難しい剱岳への登山を実際に経験しながらさぐっていく。この行動する考察力には、本当に引きつけられる。