雪舟応援団:まず表紙が笑える

 このブログで何度も書いている日本美術応援団を最初とする山下裕二との対談集である。取り上げる題材は、今回は雪舟のみ。雪舟というのは、涙で描いた鼠の逸話でよく知られているというか、それ以外には知らない人である。
 赤瀬川原平にとっては、この雪舟の慧可断臂図が日本画に興味を持ったきっかけになったということで、かなり思い出深い画である。表紙に、対談者二人の顔をはめ込んだ慧可断臂図が笑える。本の装丁は例によって南伸坊である。
 さすがに、雪舟だけで対談をうめつくすというわけにもいかなかったようで、対談以外にも赤瀬川原平と山下裕二の文章が掲載されている。本の値段の割にページ数が少ないのだが、写真が多く掲載されている。その写真を見ながら、対談を読むということになる。
 でも、山水長巻を二人で見に行って、三時間も見ていたというのはびっくりだ。やはり、本当に美術が好きなのだろう。

 

司馬遼太郎と『坂の上の雲』:ムックの再編集だが文庫本は手軽に読める

 週刊朝日で、司馬遼太郎の小説の世界に基づいた連載があって、その連載記事をまとめたムックを週刊司馬遼太郎ということで出版されている。このムックは、写真がきれいだが、少し大判である。
 司馬遼太郎と『坂の上の雲』は、坂の上の雲 に関して掲載されていた週刊司馬遼太郎 6 週刊司馬遼太郎 7とをまとめて加筆修正し文庫本化した本である。
 坂の上の雲は、司馬遼太郎の本の中でも、好きな本の1つだ。他のブログでも書いたことがあるが、坂の上のミュージアムにも行ったことがある。 そういうファンの一人として、司馬遼太郎が描いた以外のエピソードなどもふまえて、この時代の風景を知ることができる本に仕上がっている。

 

なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか:マネージャー必読の詩

 マネージャー必読と書いてはみたものの、実際には好き嫌いが分かれる本だ。ビジネス書のコーナーへ行くと、著者で本が並んでいる一人である。昔、どんな本を書いているのだろう、と思って、手に取ったことがあるが、その時は、なんて行間ばかりのすかすかの本だろうと思って、買わなかった。
 自分がマネージャーになってから、ある講演会でこの人の語る内容に共感を覚えて、その日からこの著者のファンになった。特に、この本は、自分にとって、マネージャーとはなんであるのかを確認する本になっている。年に1回くらい読み返している。文章は短く、簡潔で、まるで詩のような文体なのですぐに読める。でも内容は深い。読み返すたびに、新しい発見がある。
 長年、絶版になっていたが、電子書籍化されたようだ。

 

実業美術館:工場や刑務所を美術として語る

 日本美術応援団以来の、赤瀬川原平と山下裕二による美術談義。修学旅行へ行ったり、社会見学に行ったりで、だんだんと美術の定義が広がり、今回の対談は、とうとう工場や刑務所までが範囲に入ってしまった。さすがに、これは範囲を広げすぎであろうとは思うが、2人の対談は面白い。
 この対談で行っている大和ミュージアムには、私も行ったことがあるのだが、ここまで詳細に見ていなかった。ごみ処理場の建物は確かにアートかもしれないとも思う。