司政官:短編だけでなく解説もあり読みやすくなった

 日本SFの初期の頃から活躍した眉村卓の代表作である。
 司政官シリーズということで、短編だけでなく長編もある。司政官というのは、人類が宇宙に出て行って、惑星を植民地化している時代の話である。初期の時代は、軍隊が常駐していたが、植民政策が進展する中で、司政官というテクノクラートが惑星運営することになる。その初期の頃から、形骸化するまでの時代の中からピックアップして小説にするという壮大なシリーズものである。それを、統治機構からではなく、統治機構の末端に属して、惑星という現地に住み、統治機構と現地との間で悩む司政官の物語である。現在の会社にたとえれば、まだ市場参入したばかりの国の支店長として現地赴任した本社では部課長級でしかないサラリーマンのような立場とでもいえようか。こういう中間管理職を書かせたら、サラリーマン経験のある眉村卓の得意の分野である。
 この短編集は、従来の短編集とは異なり、いくつかの特長がある。
 まず、著者がこの本に向けたあとがきを収録している。これは眉村卓ファンにとってうれしい。私は、既に、ここに収録されている短編の本を別途持っていたのにもかかわらず、このあとがき読みたさに、本書を購入した。
 従来の短編集は、短編の発表順であったが、この本では司政官制度の年度順で収録されている。この順番で読むことで、シリーズの構成力のすばらしさが理解できる。
 司政官シリーズの世界観とロボット組織は意外に理解が難しいが、これに対する詳しくわかりやすい解説がついている、そのことにより、本短編集を初めて読む人にとって、すぐにこの世界へ没頭できる知識を簡単に得られる。この本で初めて司政官シリーズを知ることになる人たちにもお勧めである。