2017年4月アーカイブ

 家康の部下としては武将たちが有名である。天下をとるまでは、当然そういう部下たちが活躍する。しかし、一方で、家康が来るまでは、ほとんど何もなかったに等しい江戸を首都として建てていくには文官たちの活躍が必要になる。
 治水、利水という都市建設には当然の工事から、貨幣鋳造のようにへ~という分野まで、どのように江戸が建てられていくのかを興味深く読んでいける。

 とにかく設定が素晴らしい。これだけで、どうしても読みたくなる。登場人物が少し類型的とか、いろいろ注文をつけたくなるところもあるが、そんなことは、ささいなことである。展開にひかれ、一気に読ませてくれる。

 日本を太平洋戦争に駆り立てた原因の1つが統帥権の問題である、というのは、司馬遼太郎も指摘している。だが、司馬遼太郎が、その統帥権が暴れだす時代を描くことは、ついになかった。
 その原因が明治憲法にあり、その欠点を誰がどのように利用して、統帥権という化け物に育てていったのか。その化け物化に対する抵抗と挫折の歴史がまとめられている。
 本来なら、明治憲法の欠点を改正すればよかったのだが、不磨の大典と呼ばれた明治憲法を改正するということは、誰にもできなかった。人が作った仕組みを聖域化してしまうことの恐ろしさがよくわかる。

 著者の今までの作品では、一匹狼的な主人公が多かった。この作品では、IT業界の最大の闇ともいえる多重下請構造の中での、エンジニアの地獄という過酷な開発者の実態が描かれている。1次請けが稼働の3か月前に、ユーザーに説明する際に、ユーザーからスマホ対応はできないのかと問われて、1次請けがすぐに対応します、と答える。それを実現するのは、8次請けの開発者である。
 だが、これは、あくまで登場人物の設定にすぎない。小説そのものは、謎解きをしながら進む警察小説である。警察小説としては、最後の方の展開に少し無理があるような気もするが、一気に読ませてくれる力量は、相変わらずである。

 読むところ全てで、?である。何で、というところからスタートする。でも、その後の説明で、納得する。「やりたいこと至上主義」とか、本当にその通りである。でも、それを言語化できるということが素晴らしい。
 ?の後の納得感が快感になる本である。