2017年7月アーカイブ

 著者は、古代文明についての専門家ではない。土木・建築の専門家でもない。でも、技術に愛着のある人である。そんな著者が、ピラミッド、古代ギリシャ、古代ローマ、メソアメリカ・アンデス文明を石の文明という観点で、古代技術の素晴らしさを解説した本だ。
 専門家の書いた本ではないので、その語る内容の正しさ、というのを云々するのは野暮というものであろう。石の文明について語るにあたって、石材職人に話を聞きに行くという現場重視の技術者らしい行動によって、一般の概説書にはない面白さが追加されている。やっぱり、実物を見たくなってきた。

 谷沢永一お得意の、ある一人の作者を取り上げ、その作者の著作の中から名言をピックアップし、解説を加えるという著作である。


小説家の役目 
「私はそういうわけで小説という小さな説を書いてメシを食べている男であります。ときどき身のほどを忘れて中説や大説を書いてみようとすることがありますが、しばらくすると、また小さな説にもどります。」


 この開高健の文章に続く谷沢永一の解説は、こうである。


「開高健は、それまでの日本近代小説の感傷的な伝統から、己を如何にきっぱり隔離するかの思念を持して出発した。それゆえ、彼は政治宗教科学哲学の代用品であるかの如き従来の小説伝統を徹底的に拒否している。」

 なんだか、本の中で、知の格闘をやっているような内容である。今回の対象である開高健は、谷沢永一の畏友であった。それだけに、解説の冴えも素晴らしい内容である。