小田嶋隆の学歴論:こういう微妙な題材を料理できるのは著者だけだ

 学歴という微妙な話題を、個人的な観点から文章にできるというのは、この著者くらいであろう。学歴で差別してはいけない、高学歴だからといって仕事ができるとは限らない、等、一般論として学歴を語るのは簡単だ。
 でも、ここでは、学歴に含むあんなことや、こんなことを、いろんな側面から、個別論として語っている。初出はかなり前なのだが、今でも、なぜか、そうなんだなあ、と思ってしまう本だ。

ストーンサークルの殺人:登場人物が面白い

 最近のミステリ小説は、謎解きよりも登場人物の方が重要になってきているという印象だ。このミステリもそうで、登場人物が圧倒的に興味深く、これで読ませてくれる。
 謎の方は、中盤までは、五里霧中という感じが良く出ていて、次はどうなるんだろう、という期待で読み進めることができる。終盤は、犯人と動機が推測できるようになるが、それでも一気に読める。

無理ゲー社会:格差社会は本当にイヤだ

 才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア。という社会は住みにくい、と思う。
 今は生まれによって格差がある身分社会ではない。でも、才能による格差社会になりつつある。
 米国なんかは、その先進国だろう。30年程前、米国のサンフランシスコとかボストンとかに出張した時、中心部は本当に豊かなところだったが、一歩、裏道に入ると大変なことになると言われた。
 このままだと日本もそうなりかねない。通り1つ外れると歩けない社会がいい社会とは思えない。

超速PC仕事術:よくあるショートカットキーの解説だが利用シーンに合わせて紹介されているのが便利

 PC利用に関する実用書でよくあるショートカットキーを活用しようという本だが、紹介されているショートカットキーはそれほど多くない。著者が自分で使っているものを、その利用シーンとともに紹介しているからだ。
 数多く紹介されても本当に便利なものがわかりにくいが、この本だとよくわかる。

永遠の終り:古い作品だしアシモフの代表作でもないが傑作

 地球の通常時間とは別の世界に存在し、最大多数の幸福のため、それぞれの時間のできごとを矯正する永遠人の物語。時間テーマSFなのだろうが、他の時間テーマSFとはかなり趣が異なる。
 本当に久しぶりに再読したが、1955年の作品でありながら、アシモフの代表作とも言えないが、傑作である。そもそもの設定の素晴らしさ、アシモフお得意のどんでん返し。SFの面白さが凝縮した作品だ。古本でしか入手できないのが残念。