声の網:ネットワーク社会の怖さについて今でも通用する内容

 ショートショートで有名な星新一の数少ない長編小説である。ネットワークによって繋がったコンピューターが自律した行動をとるようになり、ついには神様のような存在になるという話である。古い小説なので、このネットワークによって繋がる手段はインターネットではなく電話網である。ただそれを除けば、今でもネットワーク社会が持つ怖さとでも言うべきものがあぶり出されている小説であると言える。私はこの本を40年くらい前に読んでいる。その時にはこの小説のリアリティーは理解できなかった。そもそも電話網にコンピューターが繋がるということが、まだ一般的には知られていない時代であった。今読んでみると、そこで描かれているコンピューターネットワークによるサービスであるとか、ネットワークが自律的に動くということがどういうことであるか、そうしたことがリアリティーを持って描かれている。 IBMは人工知能を事業にしようとしている。その動きがこの本で描かれている世界の先駆けでなければいいのだが。