2016年9月アーカイブ

 妻殺しの容疑で死刑の判決を受けた容疑を晴らすためには、その時間に一緒にいた「幻の女」を見つけなければならない。死刑の執行までのカウントダウンと、手がかりを得ては消える焦燥感。
 正直言って、謎解きは無理かある。でも、それは、アイリッシュの作品につきもののことである。謎解きではなく、途中の焦燥感を味わうミステリ小説としては、今の抜群の緊迫感がある。

 副題は、たった一つの「仕事」の原則。キャリアに悩む人たちの質問に答えるのだが、その答えが「好きなようにしてください」である。
 この人を食ったような回答の要点は、人はいかに環境論に左右されやすいか、ということである。環境をどう選択するかではなく、自分がすることを選択しなければならない。
 ただ、この回答の素晴らしいことは、「好きなようにしてください」であって、「好きなことをしてください」ではないことである。現在のキャリア論の落とし穴は、自分にあった仕事、自分の好きな仕事があるという前提で、それに向かって、いかにキャリアアップしていくか、というようなことになる。
 そんな、一直線の効率のいい人生なんかないよ、と中年の教授が、あの手この手で話をしてくれる。同じく中年の私には、本当によくわかる。でも、今、キャリアに悩む若者には、わからないかもしれない。それでも、こんな考え方もあるよ、という参考にはなるのではないか。参考にならなくても、その文章のうまさを堪能できる。

 冒頭、赤瀬川原平との思い出からはじまる。自分も、あの頃のあの人よりも年を取ってしまったんだ、という思いである。でも、客観的には、おじいさんでありながら、気分的にはおじいさんでない著者をめぐる面白い話が堪能できる。
 ところどころで出てくるツマとの掛け合いがまた絶妙である。特に、はじめて聞く人名や品名で、すぐには発音でいないものに出会うとスラスラ発音できるまで練習するとい習慣のエピソードなど思わず笑ってしまった。

 前も感想を書いたホーンブロワーシリーズの第9巻。題名の通り、セーヌ湾で起きた反乱を鎮圧する話と、その後で貴族になったホンブロアーが再び陸上で戦う話とが収録されている。反乱の鎮圧の方は面白いのだが、どうも陸の戦いは、私と相性が悪いようであまり面白いとは思わなかった。

 ウケを狙ったのか、題名と内容が食い違っている。副題の「人事評価の真実」がぴったりの内容である。もっといえば、若手社員のための人事評価の真実である。
 会社の説明する人事評価制度は、建前である。
 人事評価は結局は人がする。本当に客観的な評価などはあり得ない。では、どのように評価されているのか、という実態をあからさまに書いてある。少なくとも30年以上サラリーマンをやってきた私の経験に当てはめると、半分以上はその通りだ。所属していた会社が違うのに、半分以上その通りというのは、日本の伝統的な会社にあてはまることも多いのではないだろうか。

 物理学の歴史については、いくつかの本を読んできた。ただ、そうした本は、どうしても物理学者の伝記の寄せ集めのような内容になってしまいがちである。本書は、そうでなく、物理学そのものの内容を理解してもらうこと目標としているという著者のまえがき通り、物理学者の伝記的部分だけでなく、内容の解説もおもしろい。特に、数式を使った相対性理論の説明は秀逸である。光の速度が不変である、ということから、どういう観察結果が導かれるのかが、中学レベルの数学で理解できるようになっている。
 もう一つ、本書を特徴付けているのは、パラダイム変換ともいうべき、こうした発見が、どのように生じたのかという創発のモデルを丁寧に解説しているところである。著者の説明によって、それぞれの発見がどのように位置づけられるのかがよくわかる。
 といいながら、私が最も印象に残ったのは、それぞれの物理学者の人生である。どのようにすばらしい業績を残しても。個人の幸福とは別の次元なのだという現実も、また心に残るのだ。

 思考の整理学で有名な著者のエッセイである。例によって、乱読というキーワードをもとに、著者が考えてきたいろいろな経験を語る。読むべし、読まれるべからず、というように、あくまで考えることを中心とした読書論である。
 ただ、本署の中で面白いのは、「英語青年」といいう雑誌の編集を任されたエピソードである。どのようにして読者を得るか、というところから、エディターシップ論を発想したという読書とはあまり関係のないエピソードだったりする。

 前に感想を書いた「燃える戦列艦」の続編である。前作で捕虜になったホーンブロワーが母国まで戻るまでの、ほとんどが陸上での話である。ホーンブロワーシリーズは、海の話でないと、ちょっと拍子抜けである。