消滅の光輪:司政官シリーズの長編-既に権威のなくなった司政官がいかにして滅亡する惑星から住民を退避させるか

 前に書いた司政官シリーズの長編である。司政官シリーズの長編は、本書と引き潮のときとがある。本書はSFマガジンで連載され、私もちょうどその頃はSFマガジンを読んでいたので、よく覚えている。それまでは、司政官シリーズというのは全て中編小説だったので、本書中編小説かと思っていた。連載時、第1回は「前篇」、第2回は「中篇」だったので、第3回は「後篇」で完結するかと思っていたら、「後篇・その1」となって、延々と連載された。毎号SFマガジンを買うほどのSFファンではなかったが、この連載を読む必要性があるので、SFマガジンを毎月買っていたことを思い出す。
 本書は、太陽の新星化に伴い消滅する惑星から、住民をいかに救出するのか、という難題を課せられた司政官の物語である。この時代、既に司政官の権威は失われていた。そんな中で、司政官として、住民の生命のみならず、惑星移住後の生活も考えた上で、惑星丸ごとの移住計画を立案し、実行するという壮大なスケールの話である。
 本書の最初に、「アイザック・アシモフ氏へ」という献辞がある。これは、アシモフの宇宙気流で惑星から住民を退避させたというエピソードがあるが、本当にこれを実行するとなったらどうなるのだろう、ということに着眼点を得て書かれた小説だかららしい。
 既に権威のなくなった司政官制度の中で、司政官としてのあり方を模索しながら、苦闘する司政官の姿は、司政官シリーズの中でも最も印象的だ。

 

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