20世紀戦争映画クロニクル:歴史と映画情報がわかるお得な本

 終戦70年ということで、今年は戦争関係のTV番組が多かった。映画も放映され、遠すぎた橋を久しぶりに見て、上層部の主導権争いによる無理な計画が、現場にどのように悲惨な影響を及ぼすかということを思い知らされた。
 本書は、映画の紹介という形態を取りながら、20世紀における戦争史を簡潔に解説した本である。こんな映画もあるのか、と思いながら、歴史を学ぶことができるという、お得な本である。下手な歴史書よりは、簡潔に読める。

 

メディアの展開:こういう切り口もあるのか

 本の内容以前に、著者の加藤秀俊という名前が懐かしかった。初めて、著者の本を読んだのは、たぶん今から30年前である。その時、既に有名な著者であった。その人の新刊が今でも出るのか、と思っていたら、何と80歳を超えているようである。
 80歳の人が、ここまで書けるのか、と思うような大作である。600ページの本の中に、いろいろな切り口で、江戸時代の「近代」を切り取っている。引用部分は、少し読むのが難しいし、退屈な部分もあるが、素人でも江戸の「近代」を理解できる内容になっている。

 

道路の日本史: 道路の重要性がよくわかる

 道路といえばローマである。ローマの道路に関する本は多いが、日本の道路に関する本は読んだことがなかった。しかし道路というのは重要なインフラである。その歴史をたどるというのが本書である。類書があまりないので、本書で初めて知る内容も多い。
 律令時代に情報網として整備された七道駅路は、直線道路になっていて、その経路が後の高速道路計画の経路とよく似ていたことなど、興味深いエピソードもたっぷりである。

 

劉邦:項羽との年齢差が小さな劉邦

 私は司馬遼太郎のファンである。その司馬遼太郎の小説の中でも、最も何度も読み返しているのは項羽と劉邦である。その小説では、劉邦は項羽に比べてかなりの年齢として描かれている。
 ところが、この本では、劉邦は項羽よりも数歳年上なだけである、ということからスタートする。その考察の出だしから本書に引き込まれてしまった。本書は、歴史書であって、小説ではない。いくつかの説を丁寧に記述する部分もあり、私のように歴史の専門家ではない人間にとっては読みにくい部分も多い。
 だが、これが歴史書なのか、と思うくらい、劉邦などの登場人物の記述が、生き生きとしているのである。時代背景の説明とあわせて、確かにこうだったのかもしれない、と思わされてしまう。
 司馬遼太郎の項羽と劉邦を読んでから読むと、より興味深く読めると思う。

 

レンズが撮らえた19世紀ヨーロッパ:もう少し建物や風景写真が多ければ・・・

 写真というのは、そう古い技術ではない。とはいえ、19世紀後半には、それなりの画質の写真が撮れた時代である。もちろん、今のデジカメのように、誰でも使えるということはなかったが、国王や宮殿の写真などは残っている。
 本書は、19世紀のヨーロッパを映したそうした貴重な写真で、歴史を物語るという本である。万国博覧会などの貴重な写真は、本当に興味深い。
 ただ、意外に、王族などの人物写真が多い。私が理系のせいなのか、はっきりいって、王族の写真や歴史はあまり興味がない。建物や、後ろの方に少しだけ紹介されている発明品の写真などがもっと載っていれば、もっと楽しめた。

 

戦国大名の城を読む:内容は面白いのだが写真がわかりにくい

 戦国大名が構築した各地の城に関して、時代ごとに特徴となる部分を解説するという面白い内容。ただ、そうした解説では、実際にどうなっているのかという写真や図が重要なのだが、それがわかりにくいのである。写真が白黒である、ということもあるのだが、写真のいったいどの部分が、本文の解説にあるのかがわからないのである。そもそも写真に対する詳しい解説がない。
 もともと、ある程度知識のある人ならわかるのだろうが、新書なので、予備知識がない読者が対象だと思う。そういう読者には、少し不親切な本である。