時間の習俗:トリックものは再読に耐えない

 点と線の刑事が再び事件に関わるという松本清張には珍しいパターン。トリックの内容そのものは、こちらの方が多彩で、緻密だ。でも、逆に、その中心であるカメラが、フォルムからデジタルに変わる中で、ピンとこないものになってしまっている。トリックに傾きすぎた分、登場人物の描写が平坦になってしまって、再読に耐えない。40年ほど前に、本作を読んだ時には、点と線よりも面白かった記憶があるのだが。

コンスタンティノーブルの陥落:塩野七生の若い頃の作品だが

 若い頃はこんな感じの小説を書いていたんだ、と軽い驚きがあった。内容は、塩野七生に違いないのだが、視点が少し人よりである。歴史を書くというより、歴史の生き証人達の物語を書く、という感じだ。
 ローマ人の物語のような大作もいいが、こうした小説も捨てがたい魅力がある。今でも書店の棚に必ず置いてある作新のはずである。

古代史マップ:地図が素晴らしい

 この手の本は、いろいろあるが、マップという表題の通り、地図が素晴らしい。古代文明の名前と、その中心地の年の場所は知っていても、どれくらいの広さの文明であったのかは知らないことが多い。この本では、それが、一目でわかる。へ~、こんな広い範囲だったんだ、とか、以外に狭かったんだなあ、と楽しめる。

交通誘導員ヨレヨレ日記:大変な仕事だなあ

 定年後の転職活動をしていた時に、就職サイトに登録した。何せ、年齢が年齢だから、こちらから積極的にアプローチするしなない。そんな中で、こちらからアプローチしなくても勝手にオファーが来るのが、警備会社とタクシー会社であった。本当に人が不足しているのだなあ、と思ったことを覚えている。
 この本を読んで、正直な話、警備会社に応募しなくてよかったと心から思う。仕事は何でも大変だが、体力だけでなく精神的にも大変で、給料も高くないというのは、本当に大変な仕事だと思う。
 交通誘導という仕事のできる範囲と、できない範囲があるのだということは、知らなかった。なんて非効率な誘導なんだろうと思うこともあるが、そんなことは仕事の範囲ではないことも多いようだ。少なくとも、イライラすることだけはやめようと思った。