空間から読み解く世界史:従来と構成が変わった通史

 副題の、馬・航海・資本・電子から、名著「 銃・病原菌・鉄」のような切り口を期待したのだが、ちょっと期待外れであった。中身は結局、通史だ。著者によって、構成が工夫されてはいるが、馬・航海・資本・電子の切り口が活かされた内容にはなっていない。

カルタゴの運命:ちょっと長すぎるかな

 眉村卓は、司政官シリーズの大ファンである。何度も再読しっている。
 本作は、その眉村卓の長編SFということで、前から読みたかったのだが、あまりにも大作なので、読むのを躊躇していた。
 読み出したら、さすがに眉村卓で、うまい。だが、塩野七生のローマ人の物語を読んでいると、大きな事件は全て知っているので、ハンニバルに関して知識がないであろう日本人を対象とした記述は、私にはちょっと長すぎた。

業火:今度は放火事件

 このシリーズも、そろそろマンネリかな、と思っていたら、今度はいきなり放火事件だ。放火事件の捜査が、過去の事件と交差する。新しい事件が、古い事件と交差し、主人公に危機が迫るというのは、いつものパターンだが、放火事件という今までにない事件を持ってきたところが、読ませてくれる。

東芝原子力敗戦:政府頼みの事業はいかに会社を腐敗させるか

 サラリーマンにとって怖い本である。私腹をこやすために不正に手を染めたのではない。出世欲という私欲はあったのだろうが、それは同時に会社のためになると思ったはずだ。
 この本は、いろんな側面で語ることが可能な本だろう。私は、政府頼みの事業が、会社の正常な判断を蝕んでしまう怖さを感じた。普通の感覚なら、絶対にしないような事業判断を、政府の後ろ盾があるのだから、ということで下してしまう。現場とは、完全にかい離されてしまった世界だ。
 今や、政府は大赤字である。はっきりいって、普通の企業なら倒産している状況だ。そんな経営しかできていない政府の言うことを聞いて、その政府の援助をあてにするなんて、民間企業の経営者としては失格だろう。現場で起きていることをはっきりと認識してほしいものである。

スキップ:女性が主人公の小説だが男性にもどうぞ

 高校生が、一夜明けると、中年の女性になっている。周囲の時間は、ちゃんと進んでいて、一夜明ける前の、自分と同じ年の娘までいる。
 こんな設定の小説が、違和感なく、読ませてくれる。この読後感はなんといえばいいんだろう?ちょっと不思議な読後感である。

接触:ちょっと意外な展開

 前作で、少しパワーダウンしたかな、と思っていたら、本作はよかった。かなり意外な展開で読ませてくれる。謎解きは、ちょっと唐突だが。
 CSIなどのドラマで有名な、指紋検索のAFISは、本作が出版されたころに出てきたんだ、というのは、余計な感想です。

ミスター・メルセデス:さすがにスティーヴン・キングだ

 スティーヴン・キングのミステリーというだけで、面白いに決まっている。そして、その期待がそむかれることはない。
 退職した刑事が、未解決の事件を追う。追われる方も、最初から登場する。そこに、からんでくる人々。なんとなく、展開が見えてしまう部分もあるのだが、さすがに、そういう部分があっても、緊迫感はなくならない。

電機メーカーが消える日:各電機メーカーの位置づけはわかったが・・・

 会社が消える日と同じ著者だったので、読んだのだが、いろんな企業の話がつまっていて、少し表面的な感じをうけた。NTTと東電を頂点とする企業連合の絵は、非常にわかりやすい。
 SONYの出井元社長に対する評価は興味深かった。SONY凋落の戦犯として有名な経営者だが、創業者社長たちの後のサラリーマン社長という立場がSONYという会社のかじ取りを難しくしたという指摘は、うなずけるものがある。