人生の諸問題 五十路越え:読者世代を選ぶ本-私にはジャストミート

 長く続く対談集の最後になるかもしれない本である。本人達は、まだ続けたいようだが。Amazonのレビューには、共感できないという感想が多く寄せられていた。確かにそうかもしれない。今までの対談集と異なり、昔話があまりにも多すぎるし、その内容も経験者しか共感できない内容も多いからだ。
 そういう話題が多くなっているといいうのは、2人が年を取ってしまったということでもある。五十路越えという副題は、そのあたりの事情をうまく表現している。
 だが、私のように、同じ年代の読者には、ジャストミートである。

ファナックとインテルの戦略:両社の歴史をたどりながら技術戦略を考えさせられる

 インテルのマイコンが日本の電卓メーカーとの共同開発から誕生したことは、よく知られたエピソードである。だが、ファナックが16ビットマイコンの8086の初期のユーザーで、IBMが8088を採用する前に、大量に自社のコントローラに使っていたことを初めて知った。本書によれば、工場という劣悪な環境で使えるように品質向上したことが、後のIBMでのPCに使っても大きな品質トラブルにならなかった1つの要因だったらしい。
 今では、マイコンを使わずに設計するなんてあり得ないだろうと思うが、ファナックがNCにマイコンを使った当時は、そうではなかった。マイコンの能力が貧弱であったため、ハードウエアで組んだNCの方が切削精度や時間などで優れていたのだ。マイコンを使う利点は、小型化と低コスト化であった。性能よりも小型化・低コストが好まれたのは、日本の市場でNCの最大顧客が中小企業であったということである。米国では、NCの最大顧客は大企業であり、性能を望んだ。日本と米国の最大顧客の違いから、結果的にはマイコンを用いたNCが性能を向上させるにつれ、米国の市場も制覇することになった。米国のNCメーカーも日本のNCメーカーも、ともに顧客重視の戦略を取りながら、米国のNCメーカーは長期的には市場競争に敗れることになる。このエピソードは、技術戦略の難しさを考えさせられる。後知恵ではいくらでも解説できるが、その渦中にいる当事者にはわかるものではない。

対岸の彼女:学生時代の人間関係

 女性が主人公で、女性特有の人間関係も書き込まれている。でも、男の私は、主人公と同じように人つきあいの苦手な子供だった。まったく目立たず、小学校時代はいじめの対象だったり、中学時代はいじられキャラだったり、昔の思い出は、いい思い出が少ない。
 でも、当時はあんなに重要だった友達も、学校を卒業すると全く疎遠になり、どうでもよくなってしまう。
 なんでなんだろう?そんなことを考えさせられる本であった。