ウェブでメシを食うということ:筆者の自伝-ネット社会では1973年生まれの筆者でも自伝を出せるくらいの人生になるのか

 メールアドレスを作ったけど使わなかったという筆者の経験断から始まり、ウ
エブでメシを食えるようになるまでが結構長い。ウエブを収入源とする生き方が
できるようになったのが、そんなに昔ではなく、しかも食べていける人は一握り
ということがよくわかる。
 昔話の部分は、筆者のウエブでの仕事をよく知らない私のような人間には、少
し退屈である。昔話を読むなら小田嶋隆の昔の本を読む方がはるかに面白い。

地図がわかれば社会がわかる:地図に関する多角的な話題

 地図に関する本は、意外に範囲が狭い。地図の歴史だったり、地形に関する本だったり。でも、この本は、スマホアプリ、ハザードマップ、地理院地図、地図の歴史、地名表記、地図投映法、など、多角的な観点で解説されている。
 地図を実用的に活用する方法と地図に関する教養が学べる本である。

世界を動かす技術思考 要素からシステムへ:例の紹介に留まっている

 システム思考が重要だ。その主張には100%賛成する。今や、個々のブレークスルーは、あまり期待できない。今ある要素を用いて、いかに効率的に運用するか、ということが、今後重要になる。
 その科学思考を紹介する本かと思ったら、そうではなく、システムとは何かという例を紹介している本だった。ちょっと、題名と内容が期待外れである。例については、読み物としては、面白い。

世界をつくった6つの革命の物語:普通とは違う切り口で技術革命を語る

 よくある技術革命物語である。ただ、本書が、他の類書と異なるのは、その切り口が「ガラス」「冷たさ」「音」「清潔」「時間」「光
」という切り口で、それぞれが果たした役割を語ることである。
 1つ1つの切り口は確かに納得である。ただ、この切り口が、代表的な切り口かというと違う気もする。読み物としては、類書に比べて、かなり読みやすい。

バラヤー内乱:個性的な登場人物達

 さすが、ヒューゴー賞・ローカス賞受賞作だけあって、一気に読める。登場人物が構成的である。前作「名誉のかけら」の続編ということで、その個性的な登場人物の何人かの過去が前作で描かれている。もちろん、独立した小説として読めるように、説明はあるのだが、前作を読んでいない私には、登場人物になじむ時間が必要であった。前作を先に読む方がいいのかしれない。

物語戦略:戦略ではなく事例集-読み物としては面白い

 物語戦略とは、買い手が語りたくなる物語を売り手が提供する戦略ということのようだ。確かに紹介されている例は、この趣旨通りであろう。でも、その戦略をどう構築するかという話になると、とたんに具体性がなくなる。事例そのものに、あまり共通項がないので、わかりにくいのだ。でも、どの事例も面白く、そういう意味では、読んでみる価値はある。

自由軌道:密かに進める宇宙での脱出劇

 遺伝子改造で生み出された4本の手を持つ宇宙での作業人員。でも、その計画は、まだ途中であり、ほとんどが子供たちであった。その計画が中止となり、子供たちは処分されることになる。
 それを避けるために、子供たちの教師役であった主人公が、密かに脱出劇を計画する。その脱出劇の舞台が、宇宙ステーションであり、その相棒が子供たちであり、主人公が技術者である、という設定が面白さの根幹である。著者の代表作であるヴォルコシガンものと同じ設定のようだが、全く独立した長編である。