熊と踊れ:圧倒的な迫力の犯罪小説

 兄弟と友人からなる銀行強盗団の犯罪小説。周到な計画、沈着な実行力。驚くべきは、これが、実話を基に、しかもその実行犯の兄弟が執筆者の1人として完成された小説であるということである。上下巻で1000ページを超える大作であるにもかかわらず、一気に読ませる。
 名前の登場する人物が極端に少ない。北欧のミステリものにありがちな、名前が混乱して、読んでいる途中で誰が誰だかわからなくなるということもない。実話に基づく、リアリティ。この小説に没入できる要因かもしれない。翻訳も読みやすい。

1984年:面白く、そして怖い小説

 本書が、1948年に出版され、その最後の2桁の数字をひっくり返して1984年という題名で発表したことは有名な話だ。実際に、1984年が来た時には、非常に話題になっていたことを、今でも覚えている(真理省が介在しないからね。。。)。
 体制に疑問を持ち、そして最後には屈服してしまうこの小説は、本当に恐ろしい。読みにくいとことも多いが、小説としての面白さもある。本書と、本書の作者の別の著作「動物農園」とは全体主義・独裁主義の怖さを小説という形で教えてくれる。

すばらしい新世界:古典だけど、ちょっと読みずらい

 アンチユートピアものとして、1984と並び称される古典である。人間がアルファから順に階級化された世界の描写は、アンチユートピアそのものだ。ただ、小説として面白いかというと、少し微妙だ。私は、途中から、かなりだれてしまった、

死の接吻:今でも名作ミステリー

 妊娠した恋人を殺すところから始まるミステリー。犯人が最初から登場する倒叙ミステリーでありながら、彼という三人称でしかわからないとう謎が、あとあとまできいてくる。全く筋書きが読めないストーリーが展開する。
 1953年作の古い作品だが、今でも十分面白い作品だ。

理化学研究所:基礎研究の重要さがよくわかる

 こういう本は、やはり山根一眞でなければ書けない。基礎研究というわかりにくい分野を、うまく解説している。将来、応用が可能な分野については、その応用の先進性と広がりについて。そうでない分野は、その知の広がりについて。そして、スパコン「京」、スプリングエイトなどの最先端の説簿がどのように研究のブレークスルーに役立っているのか、バイオリソースセンターのような一見地味な(そして手間とお金のかかる)仕事が研究の基礎を確立しているのか。
 発明・発見だけがイノベーションではない。ビジネス観点で見ればそうであろう。でも、発明・発見こそがイノベーションの王道であり、それを支えているのが基礎研究である。

パーソナルコンピュータ博物史:昔のPCを見ることができて懐かしい-解説はちょっと淡泊

 APPLE、MZ-80、PC-8001、MSXなど有名どころのPCだけでなく、パソピアとかFM-8とか、今ではあまり語られることのないPCも含めて、昔のPCファンなら一度は見たことがあるであろうPCを多く紹介している。写真を見るだけで懐かしい。PC88系のフロッピードライブは2基横に並んでいたのに、PC98系は縦に並んでいたとか、この写真を見て、久しぶりに思い出した。PCだけでなく周辺機器も紹介されているのが、素晴らしい。解説は、客観的といえば客観的だが、少し淡泊。