スペイン要塞を撃滅せよ:ホーンブロワーシリーズの第2弾

 前にも書いたが、コノホーンボロワーシリーズは、これを原作とするドラマがあって、このドラマも素晴らしい。本巻も、ドラマになっている。前作は、中編集であったが、本作は、レナウン号に乗り込んだホーンブロワーと、ブッシュの2人が主人公で、海よりも陸で活躍する物語だ。

死者にかかってきた電話:スマイリーが登場する第1作だがちょっと物足りない

 著者のジョン・ル・カレは、スパイ小説の第一人者だ。その著作の中でも、主人公として登場したり、かげで登場したりするのがスマイリーである。本作は、著者の処女作であり、かつスマイリーが主人公である作品である。ただ、後の作品に比べ、少し説明的過ぎる文章、緊張感が伝わらないなど、ちょっと物足りないが、スマイリーのファンには必読だろう。

日本の歴史をよみなおす:百姓と農民は違う

 私が学生だった頃と、現在とでは、歴史の解釈がかなり異なっている。でも、日本の昔は農業社会であった、という認識はそのままである。しかし、本署を読めば、そもそも日本における農業従事者の割合を、百姓=農民という解釈でとらえて、大部分が農民であったという考え方は違うのではないか、というのが本署の主張である。農業社会しか考えてこなかった日本の歴史について、もう一度よみなおしているのが本署である。
 考えてみれば、これだけ海に囲まれた社会なのだから、漁業や海運が発展していたに違いない。また、これだけ森に恵まれた社会なのだから、林業や製鉄が盛んだったに違いない。そうした職業から新たな歴史をよみなおすというのは、今でも新鮮である。

機龍警察 火宅:短編集は少し物足りない

 機龍警察シリーズ初の短編集。機龍警察シリーズは、登場人物達の過去と交差しながら物語が進行するところが読みどころである。それが短編集では、1つ1つの短編が独立しているため、シリーズの特徴である部分が薄められている感じである。ちょっと物足りない。
 機龍警察の最初をSFに分類していまったために、同じシリーズである本署もSFに位置づけているが、実際にはSF色は非常に薄く、警察小説である。

司馬遼太郎 幕末~近代の歴史観:MOOKにしては難しい

 司馬遼太郎関係のMOOKが出るとつい手に取ってしまう。本人が死去してから新しい作品が出版されるわけではないが、MOOKだと気軽に司馬遼太郎の作品関連を追体験できるからだ。
 でも、本書は少し難しい。文藝の別冊だからだ。私のような気軽な読者にとっては、読むところが少ない。もっと、写真の多い、気軽なMOOKの方がやっぱり好みである。

海軍士官候補生:ドラマとは違う面白さ

 本書は、「海の男 ホーンブロアー」シリーズの第1巻である。本書の解説によると、このシリーズは日本における鞍馬天狗のようなものらしい。まあ、現在では鞍馬天狗といってもピンとこないので、このたとえが正しいかはわからないが、英国における一種の国民文学の1つのようだ。
 今から30年程前、私が高校生の頃、本シリーズはかなり良い場所に鎮座していた。刊行当時は、それなりに人気のあった本なのだと思う。私も高校生の時に読んだのだが、内容は全く忘れていた。
 別のブログで書いたのだが、本署を原作としたドラマがあって、これが結構面白かった。もう一度、原作を読んで見たいと思って、30年ぶりに再読した。読んでびっくり。ドラマは、本当に原作にほぼ忠実(女性関係を追加していたりする)で、原作を読みながらドラマの俳優(特にペリー艦長)の顔が浮かんでくるほどである。少し内容が古い気もするが、1話1話が短いので気軽に読める。
 もう少しシリーズを読み進めてもいいああ、と思っている。

機龍警察 未亡旅団:次は姿警部の話だと思っていたが・・・

 自爆条項でライザの過去が、暗黒市場でユーリ・オズノフの過去が交錯したので、次は姿の番だと思っていたら、あっさりと外された。城木理事官の実の兄と絡むのである。
 ただ、前2作とは異なり、過去とからむのは、チェチェンのテロ組織「黒い未亡人」がどのように始まったのか、という話である。相変わらず、一気に読ませてくれるし、今後に向けての伏線も張られまくっている。

 

世界の終わりの七日間:地上最後の刑事3部作の最終巻

 地上最後の刑事カウントダウンシティに続く3部作の最終巻である。いよいよ、地球最後の日まで後7日に迫り、主人公は最後に妹のニコに会うためにニコ捜索に出発する。一応は、この捜索の旅がメインストーリーなのだが、実際には、その旅の中で出会う人々との交流が主眼の物語になっている。あと、七日間という中で、人々がどう暮らしているか。様々な人々を描くために、作者は再び、主人公を捜索の旅に出すのである。
 老婦人、アーミッシュの人々など、それぞれの生き方が、読後の余韻になるような物語だ。