永遠の終り:古い作品だしアシモフの代表作でもないが傑作

 地球の通常時間とは別の世界に存在し、最大多数の幸福のため、それぞれの時間のできごとを矯正する永遠人の物語。時間テーマSFなのだろうが、他の時間テーマSFとはかなり趣が異なる。
 本当に久しぶりに再読したが、1955年の作品でありながら、アシモフの代表作とも言えないが、傑作である。そもそもの設定の素晴らしさ、アシモフお得意のどんでん返し。SFの面白さが凝縮した作品だ。古本でしか入手できないのが残念。

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン:表紙のイメージと内容が違いすぎる

 表紙はメカロボット風なのだが、本作品で、メカロボットが出てくるのは、ほんの少しである。しかも、主要な部分ではない。
 主要なストーリーは、日本が戦争に勝ったがために、暴力と陰謀に満ちた世界になってしまった中で、陰謀に巻き込まれた人たちの物語だ。あまりに醜悪な世界なので、読後感もすっきりしない。
 でも、たぶん、続編を読むんだろうなあ、と思う。

ゲームの王国:脇役の不思議な登場人物

 ポルポト時代にカンボジアが舞台という、かなり変わったSFである。主人公2人は、いかにもSFの主人公という感じである。この2人を中心に、暗黒の時代を生き抜く。
 だが、脇役が圧倒的な存在感がある。輪ゴムで将来が見える子供、土を食べる男、なんというか、本当に不思議である。

クロストーク:メインストーリーは単純なのだが

 ひょんなことからテレパシー能力を持ってしまった主人公が、あわてふためく、というメインストーリーである。言ってしまえば、それだけのストーリーなのだが、さすがにコニー・ウィルス。約700頁もの内容を飽きさせない。ある程度、展開は読めるのだが、要所要所で小技がきいている。

不見の月:前作からより深化

 永遠の森の続編。主人公は、博物館惑星の新人2人になっているが、博物館の人たちは前作と同様である。
 現代アートが新素材・新技術を応用したものになっている。このSFらしい設定を、いかにも、という感じで美術論を展開しながら、人間劇が進行する。ちょっと、他のSFでは味わえない独特の作品である。

ミクロの決死圏2:ミクロ化で起きる現象を楽しめるかどうか

 前作は、映画化のノベライズだった。本作は、アシモフの作品である。なので、当然、冒険という内容にはならない。さえない主人公がイヤイヤミクロ化され、人体に入って出てくるという作品である。
 レビューでは、否定的な意見が多かったが、私は楽しめた。たぶん、人の思考を読み取れるかというようなメインスローリーではなく、ミクロ化で起きる現象を小説として楽しめるかどうかが、評価の分かれ目なのだろう。少なくとも、ストーリーは大したことはない。でも、細部は面白い。

永遠の森:SFでしか表現できないであろう芸術

 あらゆる芸術品を扱うために作られた巨大博物館。その中の学芸員達は、自分たちの脳とデータベースとを直結することによって、膨大な芸術品データーベースにアクセスできるようになっている。
 このSFの設定が生きた、SFでしか表現できないであろう、芸術をめぐる短編集に仕上がっている。