銀河帝国を継ぐ者:良質のスペースオペラ

 本書の解説でも指摘されているように、この世界観で3部作くらい書けるくらいの圧倒的な世界観である。
 本書の裏表紙の紹介に出てくる、「プリンス」、「少年ケムリ」という言葉からは、ヤングアダルト向けの本のようだが、実際には、良質のスペースオペラに仕上がっている。
 ここまで圧倒的な世界観であると、その世界観に慣れるまでに時間がかかるのが通常なのだが、本書ではそこがスムーズにいく仕掛けになっている。そもそも主人公が、いきなり新しい世界へ飛び込むという設定である。主人公の指南役にベテランの「奉仕者」が仕えるということで、主人公がそのベテランに教えを乞う形で読者自身も新しい世界へ徐々に入り込んでいけるようになっている。
 一旦その世界の設定を理解したら、そのストーリーの素晴らしさに一気に読んでしまうことになる。まさに良質のスペースオペラである。ただ終盤の内容は、少しひねりが足らず、ものたりない。本当は続編を期待したいところなのだが、解説によれば筆者は続編を書く気がないという。