ヴォル・ゲーム:今度は巻き込まれ型の大騒動

 前作では、どちらかと言えば、自ら騒動を大きくしていく主人公マイルズであった。今回は、最初のうちはしおらしく従順に、と思ってはいれも、どんどん巻き込まれ、最後にはやはり、マイルズ自ら仕掛けて大騒動という作品だ。

バラヤー内乱:個性的な登場人物達

 さすが、ヒューゴー賞・ローカス賞受賞作だけあって、一気に読める。登場人物が構成的である。前作「名誉のかけら」の続編ということで、その個性的な登場人物の何人かの過去が前作で描かれている。もちろん、独立した小説として読めるように、説明はあるのだが、前作を読んでいない私には、登場人物になじむ時間が必要であった。前作を先に読む方がいいのかしれない。

自由軌道:密かに進める宇宙での脱出劇

 遺伝子改造で生み出された4本の手を持つ宇宙での作業人員。でも、その計画は、まだ途中であり、ほとんどが子供たちであった。その計画が中止となり、子供たちは処分されることになる。
 それを避けるために、子供たちの教師役であった主人公が、密かに脱出劇を計画する。その脱出劇の舞台が、宇宙ステーションであり、その相棒が子供たちであり、主人公が技術者である、という設定が面白さの根幹である。著者の代表作であるヴォルコシガンものと同じ設定のようだが、全く独立した長編である。

オービタル・クラウド:IT技術者必読のSF・ミステリー

 SF関連の賞で三冠受賞というのもうなずける面白さである。解説にあるように、国際的な冒険サスペンスでもあるので、SF好き以外にも近未来サスペンスとしておすすめだ。ちょっと、IT系の用語が多すぎるきらいはあるが。
 主人公が、直観で宇宙の軌道を予測できる能力を持つという設定は面白い。IT技術は、あくまで主人公の相棒のお仕事である。その相棒が使いこなしているのがラズパイで、このラズパイが大活躍する。ミステリ好き、SF好きのIT技術者必読の書だろう。

GENE MAPPER:今のインターネットが崩壊した後の社会を描く傑作

 インターネットが崩壊した後に構築された新しいネットワーク社会において、 遺伝子デザイナーの主人公が、インターネット時代の情報をサルベージするハッ カーと協力して、遺伝子崩壊の謎に臨む。というのがメインストーリーである。
 だが、この小説の面白さは、その個々の舞台装置の描写の真実味である。心地よく、著者の作った世界に浸ることができる。

未来の二つの顔:シンギュラリティが語られる今日こそ読むべき本

 自己防衛本能を持ったコンピュータが、自分を守るために、人を抹殺するような方向に進化したとき、人類はそのコンピュータの機能を停止させることができるか?これを確認するために、宇宙植民地を使って実験をする。
 20年以上も前に書かれたSFだが、コンピュータが人類を超えるシンギュラリティの可能性が本当になった現在こそ読まれるべきSFであろう。

竜の挑戦:コンピュータの発見と糸胞襲来の阻止

 前から感想を書いているパーンの竜騎士シリーズの、日本語訳がある中での完結編に近い作品。南ノ大陸でコンピュータが発見され、そのコンピュータに導かれて、糸胞の襲来を阻止するプロジェクトが立ち上がる。
 いかにもSFらしい作品である。と同時に、その中心人物が、レサ達の世代ではなく、ジャクソムの世代であり、世代交代の物語でもある。

 

ディアスポラ:ハードSFの最高峰なのだろうが少し難しい

 海外SFハンドブックで、オールタイム・ベストの第2位(1位はソラリス)に選ばれた有名なSFである。前から読もうと思っていたのだが、手に取るまで時間がかかった。正直言って、グレッグ・イーガンのSFは少し苦手なのだ。ハードSFとして、あまりにもハードなのである。
 今回もそうだ。随所に出てくる科学的な話が、一応理系人間である私にもさっぱり追いつけない。メインストーリーは、こうした部分を理解せずとも読み進めることができるのだが、理解せずに読み飛ばしていた部分に関する消化不良感が残ってしまうのである。

海底2万里:SFとしての完成度の高さに驚かされる

 前回に引き続き、ヴェルヌのSFの古典的名作である。地底旅行の感想では、さすがに少し古いかも、という感想を書いたが、本作の感想は、今でも古びていない、である。
 世界最初の原子力潜水艦の名前が、この本の潜水艦の名前からとられたことは有名な話である。この話が、その原子力潜水艦の話だとしても、我々素人は信じてしまうかもしれないくらいの完成度の高さだ。