氷の闇を越えて:さすがに解錠師ほどの作品ではない

 前に感想を書いた本が電車を乗り過ごすほどの面白さだったので、その著者の出世作を読んでみた。胸に弾丸が残ったままの元警察官の私立探偵、という設定はさすがである。でも、一気に読んでしまうというほどの面白さではな  い。謎解きも、少し無理がある。

解錠師:熱中のあまり電車を乗り過ごしてしまった

 電車の中で読んでいて、久しぶりに電車を乗り過ごしてしまった。これほど、一気に読める本は久しぶりである。
 幼い頃の事件のため口をきけなくなった金庫破りの名人という設定が素晴らしい。しかも、特定の犯罪グループに所属するのではなく、金庫破りの専門職としてのみ登場する。複数のポケベルを所持し、どのポケベルに依頼がかかってくるかで、その依頼人のレベルがわかるしくみになっている。
 本当にあるかのような設定の中で、スピーディにストーリーが進む。読後感も、すっきり、という最高のミステリである。

幻の女:謎解きには無理があるが緊迫感は抜群

 妻殺しの容疑で死刑の判決を受けた容疑を晴らすためには、その時間に一緒にいた「幻の女」を見つけなければならない。死刑の執行までのカウントダウンと、手がかりを得ては消える焦燥感。
 正直言って、謎解きは無理かある。でも、それは、アイリッシュの作品につきもののことである。謎解きではなく、途中の焦燥感を味わうミステリ小説としては、今の抜群の緊迫感がある。

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ:スマイリーものの最高傑作か

 前に書いたように、スマイリーが主人公の作品を順に読んでいる。やはり本作品は、スマイリーものの最高傑作ではないかと思う。かなり長い作品で、スマイリーは引退した部外者でありながら、英国情報部の2重スパイ(もぐら)を見つけるという作戦を極秘に引き受ける。
 容疑者が、幹部なので、正式の調査はできない。本部に保存されている記録は、仲間のギラムに盗み出してもらう必要がある。何が起きていたかという事情聴取も相手がどこにいるかを探しながら、独自に進める必要がある。一歩、一歩、証拠を固めながら、真相に迫っていく。
 通勤電車で、終わりの30ページくらいまで来てしまい、そのまま会社へ行かず、喫茶店で残りを一気に読んでしまうはめになった。

愛国殺人:どの観点から物事を見るか-ポアロの推理がさえる

 ポアロものとしては、それほど有名な作品ではないが、ポアロの推理が楽しめる作品である。あるものごとを、どこから、誰から見るのか、が推理のポイントになっている。いつもの通り、最後の謎解きまでは、内容が把握できないが、謎解きがはじまると、なるほどとなる。

スマイリーと仲間たち:現場工作員でもあり指揮官でもあり司令塔でもあるスマイリー

 前作についても感想を書いたスマイリー3部作の3作目である。1作ごとにスマイリーの立場は変わる。今回は、自ら現場へ飛び込み、司令塔として現場に指示し、実際に現場の指揮官として活躍する。活躍といっても、一旦、現場を引退した老人として、だ。
 スマイリーという人物の魅力のすべてを出し切るような形での作品になっている。ストーリーとしては、あまり複雑ではないが、前2作で出てきた魅力的な脇役たちが、「仲間たち」として登場するのも、読みどころである。

そして誰もいなくなった:10人のインディアンの歌を初めて知った本

 久しぶりに再読した。クリスティーのミステリーは、なぜか再読にたえる作品が多い。その中でも、本作は、何度か読み返すことのできる傑作である。
 ある孤島に、10人の男女が集められるとことから話がはじまる。そして、10人のインディアンの歌と同じ死に方で殺されていく。その中で、くりかえされる人々の葛藤も描かれる。
 トリックは、本当にこんなにうまくいくのという感じなのだが、クリスティーの筆力に押し切られてしまう。

スクールボーイ閣下:現場とスマイリーとの同時並行

 前にも感想を書いたスマイリー三部作の第2弾である。前作は、スマイリーの孤独な探索をメインにした話であった。本作は、スマイリーよりも、現場工作員のジェリーの活躍が目立つ作品である。
 現場の過酷さを理解しながら、探索を続けるスマイリー。その周囲で、政治でうごめく安全領域にいる人々。長編でしか繰り出せない物語だ。

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ:さすがスマイリー

 前に書いたように、スマイリーが主人公の作品を順に読んでいる。やはり本作品は、スマイリーものの最高傑作ではないかと思う。かなり長い作品で、スマイリーは引退した部外者でありながら、英国情報部の2重スパイ(もぐら)を見つけるという作戦を極秘に引き受ける。
 容疑者が、幹部なので、正式の調査はできない。本部に保存されている記録は、仲間のギラムに盗み出してもらう必要がある。何が起きていたかという事情聴取も相手がどこにいるかを探しながら、独自に進める必要がある。一歩、一歩、証拠を固めながら、真相に迫っていく。
 通勤電車で、終わりの30ページくらいまで来てしまい、そのまま会社へ行かず、喫茶店で残りを一気に読んでしまうはめになった。

高貴なる殺人:スマイリー登場の第2作の推理小説

 スパイ小説の第一人者のジョン・ル・カレ著作の中でも、主人公として登場したり、かげで登場したりするのがスマイリーである。本作は、前に感想を書いた「死者にかかってきた電話」に続く第2弾である。第2作とはいっても、本作は、スパイものではなく、殺人事件を追った推理小説である。イギリスの名門パブリックスクールの教師達、英国教会などの背景がわからないと、ピンとこないところも多い。