軍艦島 海上産業都市に住む:廃墟でなく生活としての軍艦島

 狭い空間で人が生活するシーンをある映画で見たことがある。その映画の題名も内容も忘れてしまったがそのシーンだけなぜか頭に残った。後日それが軍艦島というところであること知った。長い間、立ち入り禁止であった軍艦島だが一部が訪問できるようになって観光地になっている。しかし、そこで見に行けるのはあくまで廃墟としての軍艦島である。
 本書は、軍艦島での生活を撮影した写真を基に、軍艦島での生活を記述した貴重な本である。密集した空間、嵐になると押し寄せてくる波で水没する場所、子供達の生活、炭鉱での仕事。モノクロの写真と、その写真に関しての文章とが、軍艦島での生活を伝えてくれる。巻末には、住んでいた人の座談会についても収録されている。
 世界遺産になってから雨後の竹の子のように出版された本とは一線を画する内容だと思う。