役員室午後三時:ワンマン経営者の孤独

 大企業のワンマン経営者と、そのワンマン経営者を追いやり自分が社長になった部下の物語。会社のためを思いひたすら頑張るワンマン経営者。だが、その頑張りは時代に合わず取り残されていく。徐々に、会社のためという口実で自己保身的行動を取るようになり、結果的には、会社を追われる。
 そのワンマン経営者の部下として、新しい時代の経営者として、自分の上司を追い出し、社長になる若い副主人公。2人の行動が経済小説として、緊張感のある小説になっている。当時の時代背景など知らなくても読める小説である。
 城山三郎の小説の常として、この小説にもモデルがいる。カネボウである。新しい時代を切り開くこととなった副主人公だが、実際のモデルの人物は、長く会社に君臨し、あの粉飾決算の元凶を作ることになる。結果的には、自分が追い出したワンマン経営者よりも会社にダメージを与えることになる。皮肉なことだ。

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