四神の旗:不比等の子供たちの物語

 不比等を描いた比ぶ者なきの続編。藤原不比等なきあと、不比等の子供たち4人の物語。兄弟の1人1人の行動を丹念に追っていく。一方で、不比等の妻として不比等の右腕的役割を果たしてきた三千代は、藤原氏ではなく自分の子供と自分の氏族のために動く。
 前作に比べると主人公が分散されてしまったため、少し緊迫感に欠けるが、逆に4人が主人公のため一直線でない紆余曲折の部分が面白い。

三分間の空隙:三秒間の死角の主人公が再び

 三秒間の死角の主人公達が再び活躍する。麻薬の潜入捜査、政府上層部の約束が保護にされ主人公が独力で自分の命を守る、という流れはほぼ同様である。だからといって、面白くないわけではない。前作と同様、一気に読める。ただ、次々と襲いかかる危機に、あまり切迫感が感じられないという部分も前作と同様である。

 

日本史の論点:時代ごとに著者が異なるので読みにくい

 歴史というのは過去のことである。だから、変わらないかというとそうではない。歴史の見方は変わるのである。今の時点での日本史の世界で注目されている論点を時代別にまとめた書である。こういう書は少ないので、得がたい。でも、時代ごとに著者が異なるので、文章のトーンが違いすぎて読みにくい。もっとも、1人で書ける学者がいるわけもない。時代別に分けざるを得ないのは仕方なのだが。面白いところは面白い。

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン:表紙のイメージと内容が違いすぎる

 表紙はメカロボット風なのだが、本作品で、メカロボットが出てくるのは、ほんの少しである。しかも、主要な部分ではない。
 主要なストーリーは、日本が戦争に勝ったがために、暴力と陰謀に満ちた世界になってしまった中で、陰謀に巻き込まれた人たちの物語だ。あまりに醜悪な世界なので、読後感もすっきりしない。
 でも、たぶん、続編を読むんだろうなあ、と思う。

力石徹のモデルになった男

 あしたのジョーは、アニメで見た。空手バカ一代もアニメで見た。キックの鬼もアニメで見た。こうしたアニメの登場人物であったり、登場人物のモデルであったりした人のノンフィクションである。こういう人がいたんだ、というだけで、読み進めてしまう。

還暦からの底力:ちょっと期待と違う内容だった

 題名から、定年後の生き方について書かれているのかと思ったら、少し違った。どちらかというと、副題の「歴史・人・旅に学ぶ生き方」の本だった。こういう生き方をしていると、定年とか還暦とかを意識しなくても生きていけるという内容だ。
 確かにそうかもしれないが、普通の人生では、そんな生き方をしていない。

メインテーマは殺人:作者が活躍

 カササギ殺人事件の作者の、新機軸のミステリー。作者がワトソン役という意味では、古典的なのだが、ワトソンではなく、コナンドイルがワトソン役をやるのである。
 つまり、この作品では、作者のホロヴィッツが、その名前で出てくる。しかも、そのホロヴィッツは、アレックスシリーズの作者であり、刑事フォイルのシナリオもやっていたりと、本当のホロヴィッツがやっていることが描かれている。どこまでが本当かわからないという本来の殺人事件の謎意外の謎まであるのだ。
 推理そのものは古典的だが、この趣向が楽しませてくれる。