二流小説家:主人公の書いた二流小説を楽しむ本

メインストーリー自体はミステリー小説としては平凡な出来であろう。
だが休日の日にだらだらと暇つぶしに読む本としては、私には面白かった。この小説の中はメインストーリーとは別に主人公の書いた二流小説が散りばめられている。この二流小説がいかにも二流小説なのである。この二流小説をいかにも二流小説だと思いながら面白がれる人であれば、休日の暇つぶしには最適な本になるであろう。それがミステリー小説の楽しみ方なのかどうかは別ではある。
さらに、この小説を原作に、日本で映画が作られるとは思ってもみなかった。この小説の面白さは、ストーリーでも会話でもなく、主人公の書く二流小説なので、いくらなんでも映画には向かないと思うのだが、世間の評価は異なるようである。

 

銀河帝国を継ぐ者:良質のスペースオペラ

 本書の解説でも指摘されているように、この世界観で3部作くらい書けるくらいの圧倒的な世界観である。
 本書の裏表紙の紹介に出てくる、「プリンス」、「少年ケムリ」という言葉からは、ヤングアダルト向けの本のようだが、実際には、良質のスペースオペラに仕上がっている。
 ここまで圧倒的な世界観であると、その世界観に慣れるまでに時間がかかるのが通常なのだが、本書ではそこがスムーズにいく仕掛けになっている。そもそも主人公が、いきなり新しい世界へ飛び込むという設定である。主人公の指南役にベテランの「奉仕者」が仕えるということで、主人公がそのベテランに教えを乞う形で読者自身も新しい世界へ徐々に入り込んでいけるようになっている。
 一旦その世界の設定を理解したら、そのストーリーの素晴らしさに一気に読んでしまうことになる。まさに良質のスペースオペラである。ただ終盤の内容は、少しひねりが足らず、ものたりない。本当は続編を期待したいところなのだが、解説によれば筆者は続編を書く気がないという。

 

偉いぞ!立ち食いそば:表紙の哀愁の漂う立ち食いそばの風景が絶品

 東海林さだおのエッセイは本当に面白い。この本も面白い。
 この本のエッセンスが、表紙のイラストに集約されている。本書のメインは、立ち食いそばのメニューを全て制覇すると言う内容である。なんと6回に分けてその内容は紹介されている。さらにはそのメニューを全制覇しようとした立ち食いそばの社長との対談まで掲載されている。
 最初の回に、立ち食いそばの正しい食べ方と言うイラストが載っていて、そのイラストのコメントを省いた部分が表紙のイラストなのである。ちなみに本文の中のイラストのコメントを少し引用してみよう。

  • 背中に哀愁が漂うようになれば一人前
  • 表情は「憮然」とが正しい
  • 箸の先で丼を引き寄せる
  • ジャンパーのたぐいが似合う
  • 靴底を見せる
  • 左ひじをカウンターにつける人が多いがむしろポケットの方が小粋に見える

 

 さすが東海林さだおだ。観察の鋭さ指摘の的確さに思わず笑ってしまう。この後、延々と続くそれぞれのメニューに対する感想や思い入れも、例によって独特の表現で書かれている。
 本書では、この立ち食いそばに関する話題以外に、2日間で駅弁を24個食べるという馬鹿げた試みについても書かれている。いずれも抱腹絶倒だ。

 

このブログについて:自己紹介を兼ねて

 このブログは、中年の電子機器関係のソフトウエア技術者が読んだ本について、その感想を記録するものである。私は、Amazonのカスタマーレビューを書いていて、Best500レビュアーに入っているので、私のAmazonのカスタマーレビューもそれなりの役には立っているのではないかと想像している。
 しかし、Amazonのカスタマーレビューは、読んだ本全てについてレビューを投稿しているわけではない。それは、既に投稿されているレビューで書かれた内容以外の感想がなければ投稿しないということと、星2つ以下の評価をするような本については、よほどのことがない限り投稿しない、という原則にしているからである。
 このブログでは、そうした枠は離れて、いろいろな本の感想を書いていきたい。新しく読んだ本だけでなく、昔読んだ本の感想を書くこともある。
 主として、下記のような分野の本を扱うことになる。

  • 趣味としての小説:歴史小説、SF、ミステリー
  • 趣味としての小説以外の本:科学関係、歴史関係、旅行関係
  • ビジネス書
  • 自己啓発書
  • 勉強本:ソフトウエア工学、電子工学、英語、Web関連