手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ:ネットゲーマーの生活を活写

 こんなにまで、ネットゲームに人生の時間を費やし、しかも作家として実社会に復帰できるなんて、少し驚きである。ゲームの世界が中心ある青年達の話を聞いても、どういう生き方なのか想像もつかなかった。こんなに打ち込んでいるなんて、本当にびっくりである。

コンビニ人間:自分をかくしてコンビニ店員として生きる生き方

 芥川賞受賞作でなければ、決して出会わなかったであろう本である。公園で死んでいる小鳥を見て、他の子どもたちのように悲しむのではなく、食べようと言った主人公の子供時代のエピソードが鮮明である。
 ちょっと変わった子供が、成長するにつれ周囲に隠れこむことを覚えていく。そして、コンビニ店員という、隠れこむ場所を見つける。
 これって、なぜかよくわかる。私も、会社という場に隠れこんでいるからだ。

ターン:二人称の小説はちょっと読みにくい-実は、この二人称に意味がある

 著者の「時と人」シリーズの第2弾。冒頭から、二人称で小説は始まる。正直言って、ちょっと読みづらい。途中で放り出さずに読み進めることができたのは、著者の筆力のなせる力だろう。
そして、読み進めるにつれて、この二人称表現に意味があったことがわかる。それが、どういう意味なのかは、是非とも本書を読んで欲しい。
 小説の面白さとしては、第1弾のスキップの方が、はるかに上であると思うが・・・。

スキップ:女性が主人公の小説だが男性にもどうぞ

 高校生が、一夜明けると、中年の女性になっている。周囲の時間は、ちゃんと進んでいて、一夜明ける前の、自分と同じ年の娘までいる。
 こんな設定の小説が、違和感なく、読ませてくれる。この読後感はなんといえばいいんだろう?ちょっと不思議な読後感である。

家康、江戸を建てる:武将ではなく文官たちが江戸を建てていく短編集

 家康の部下としては武将たちが有名である。天下をとるまでは、当然そういう部下たちが活躍する。しかし、一方で、家康が来るまでは、ほとんど何もなかったに等しい江戸を首都として建てていくには文官たちの活躍が必要になる。
 治水、利水という都市建設には当然の工事から、貨幣鋳造のようにへ~という分野まで、どのように江戸が建てられていくのかを興味深く読んでいける。

海軍提督ホーンブロワー:ホーンブロワーシリーズの完結

 前から感想を書いているホーンブロワーシリーズが、これで完結する。士官候補生から提督までの活躍を描いたシリーズだ。さすがに海軍提督というのは、偉くなりすぎて、艦長の頃が一番面白かった。

セーヌ湾の反乱:反乱の鎮圧の方は面白いのだが・・・

 前も感想を書いたホーンブロワーシリーズの第9巻。題名の通り、セーヌ湾で起きた反乱を鎮圧する話と、その後で貴族になったホンブロアーが再び陸上で戦う話とが収録されている。反乱の鎮圧の方は面白いのだが、どうも陸の戦いは、私と相性が悪いようであまり面白いとは思わなかった。

勇者の帰還:陸上の話なのでホーンブロワーらしくない

 前に感想を書いた「燃える戦列艦」の続編である。前作で捕虜になったホーンブロワーが母国まで戻るまでの、ほとんどが陸上での話である。ホーンブロワーシリーズは、海の話でないと、ちょっと拍子抜けである。

燃える戦列艦:小さなエピソードの積み重ね

 前から感想を書いているホーンブロワーシリーズの第6巻である。主人公は、とうとう、海佐の中でも下から4分の1くらいのところに位置し、戦列艦の艦長になる。副長は、前巻から引き続きブッシュだ。前巻で、少しロマンスが芽生えかけたバーバラの結婚相手が提督となり、例によって、現場を知らない無能な提督のせいで大変な目にあってしまう。
 1つ1つは、短いエピソードの積み重ねで、ホーンブロワーの活躍が描かれる。

パナマの死闘:時系列的には第5巻だが執筆としては第1巻

 前から感想を書いているホーンブロワーシリーズの第5巻。いよいよ主人公は、フリゲート艦の艦長として大活躍する。
 ただ、読んでいて少し違和感があった。文章が少し堅い気がしたのだ。解説を読むと、ホーンブロワーシリーズの執筆としては、この巻が最初の作品だったらしい。その後、好評に応じて、ホーンブロワーの若い頃の活躍も執筆していたらしい。
 ストーリーとしては面白いのだが、文章としては前巻までの少し自由な感じの文章の方が好きだ。