ダン・ブラウン徹底攻略

 ダン・ブラウンは、ダ・ヴィンチ・コードでベストセラー作家になった。そのダ・ヴィンチ・コードの主人公ロバート・ラングトンが主人公である4つの作品に関する徹底攻略本である。秘密結社、歴史の謎などを秘めた物語が、有名な観光地を舞台に繰り広げられる。
 そこに出てくる秘密結社やキリスト教がらみの話題は、日本人にはあまり馴染みのないものも多い。こうした本があると、欧米の読者には当たり前でありながら、日本人にはピンとこない部分を補完してくれる。

 

軍艦島 海上産業都市に住む:廃墟でなく生活としての軍艦島

 狭い空間で人が生活するシーンをある映画で見たことがある。その映画の題名も内容も忘れてしまったがそのシーンだけなぜか頭に残った。後日それが軍艦島というところであること知った。長い間、立ち入り禁止であった軍艦島だが一部が訪問できるようになって観光地になっている。しかし、そこで見に行けるのはあくまで廃墟としての軍艦島である。
 本書は、軍艦島での生活を撮影した写真を基に、軍艦島での生活を記述した貴重な本である。密集した空間、嵐になると押し寄せてくる波で水没する場所、子供達の生活、炭鉱での仕事。モノクロの写真と、その写真に関しての文章とが、軍艦島での生活を伝えてくれる。巻末には、住んでいた人の座談会についても収録されている。
 世界遺産になってから雨後の竹の子のように出版された本とは一線を画する内容だと思う。

 

国立科学博物館のひみつ:リニューアルした地球館も是非紹介して欲しい

 国立科学博物館は、常設展も楽しい博物館である。何の予備知識がなくても、楽しめる。子供が小さい頃は、子供と一緒に何度か行ったことがある。
 だが、子供が一緒に行ってくれなくなると、特別展だけ見るようになって、常設展へは、ここ数年行っていない。この本を読んで、常設展へ行きたくなった。この本を読んでから行けば、より楽しめるに違いない。
 残念ながら、この本で取り上げられているのは、日本館だけである。つい最近リニューアルした地球館に関しても、是非、本書の続きとして出してほしいものである。

 

プガジャの時代:大阪のある時代を思い出させる

 プガジャというのは、70年代から80年代にかけて、大阪で発行されていた情報誌の名前である。その当時、ちょうど私は社会人数年目までを大阪で暮らしていた。当時、情報誌としては、エルマガというのもあった。大学の生協には、プガジャもエルマガも平積みにされていた。
 私自身は、プガジャよりもエルマガ派であったので、プガジャそのものを購入したことはほとんどない。しかし、この本の魅力は、プガジャそのものを語るとともに、その時代の大阪のある部分を語っているところにある。70年代から80年代にかけて、若い時代を大阪で過ごしたことのある人にとって、懐かしさを感じる本でもある。

 

ゴッドファーザー伝説:実際には退屈なマフィア抗争

 ゴッドファーザーという映画が好きだ。PART3までのブルーレイを持っているくらいである。
 なので、ゴッドファーザーのマイケルのモデルになった人物が書いた本ということで、読んでしまった。この本で書かれているのは、映画ではなく実際の抗争の話である。まあ、全て本当というわけでもないだろう。でも、少し退屈なのである。結局、誰かが裏切った、とか、そんな話の連続である。映画は、そういう部分を映像にしているから引き込まれるのだ、ということがよくわかった。

 

司馬遼太郎と『坂の上の雲』:ムックの再編集だが文庫本は手軽に読める

 週刊朝日で、司馬遼太郎の小説の世界に基づいた連載があって、その連載記事をまとめたムックを週刊司馬遼太郎ということで出版されている。このムックは、写真がきれいだが、少し大判である。
 司馬遼太郎と『坂の上の雲』は、坂の上の雲 に関して掲載されていた週刊司馬遼太郎 6 週刊司馬遼太郎 7とをまとめて加筆修正し文庫本化した本である。
 坂の上の雲は、司馬遼太郎の本の中でも、好きな本の1つだ。他のブログでも書いたことがあるが、坂の上のミュージアムにも行ったことがある。 そういうファンの一人として、司馬遼太郎が描いた以外のエピソードなどもふまえて、この時代の風景を知ることができる本に仕上がっている。

 

現代赤瀬川考:赤瀬川原平の多才な面がよくわかる

 前回、最近、赤瀬川原平の本を読んでいるということを書いた。本の1冊、1冊は、赤瀬川原平の多才な一面のある部分を切り出した内容である。私のように、芸術家としての赤瀬川原平を知らない人間にとっては、面白いエッセイを書く人である。
 でも、本当は、とんでもなく多才な人である。それを実感したのは、赤瀬川原平の芸術原論:千葉市美術館 – ミュージアム右往左往で書いた通りである。職業は「赤瀬川原平」という以外に表現のしようがなかった。
 そんな多才な面を垣間見えるのが本書である。正直言って、少しあわてて作った感があって、もう少し丁寧に対談などを増やしてくれればよかったのに、とは思うが。

 

チャリング・クロス街84番地:読書が好きだが本を愛しているわけではない私には少し退屈な本だった

 書物を愛する人のための本というのが副題である。読書好きの私としては、いつか手に取って読んでみるべき本のように思っていた。実際に読んでみたら少し退屈だった。
 私は、読書の時間が好きである。でも、本そのものにこだわりはない。電子書籍で入手できるのなら、図版の多い専門書以外は、紙の本と電子書籍なら基本的には電子書籍を選ぶ。今出版されている本だけでも、読みたい本がたくさんあるのに、古書を買うということはめったにない(Amazonで古書が気軽に買えるようになって、かなり古書を買うようになったのは確かだが)。紙の本が増えると書棚からあふれるので、読み終えた本は売り払うことにしている。
 読書は好きでも、本を愛しているわけではない私にとって、「書物を愛する人のための本」が少し退屈だったのは当たり前のことかもしれない。

 

枝雀らくごの舞台裏:枝雀ファン必読の本

 落語作家で生前の桂枝雀とも親しかった著者が、それぞれの演目のちょっとした解説と、それにまつわる桂枝雀の思い出について書かれた本である。枝雀落語の中から48の演目について解説されている。
 例えば、私の大好きな演目の1つである「代書」から少し引用してみる。

 この話の主人公である松本留五郎は枝雀落語の・・・・というより上方落語界、いや我が国落語界のスーパースターである。
 大阪市浪速区日本橋3丁目26番地の生まれで年齢は46歳。父は20年前に亡くなったは母親は健在。生年月日は年度こそ不明だが1月1日。本籍地内の小学校を2年で中退。職業は「ポン」。米菓を製造販売してを立てていたわけである。

 ここだけで「代書」のエッセンスが語られつくされている。他の演目の解説も、枝雀落語の面白さを語りつくしている。さらにはその演目の音源まで紹介されているという親切さである。
 桂枝雀だけではなく、師匠の桂米朝や弟子の思い出も語られていて非常に面白い。作品だけの紹介ではない面白さがある本である。
 一方、各演目で時期による芸の違いの解説などもあって、既に持っているDVD以外にも購入したくなってくるという副作用がある。ファンにとって危険な本でもある。
 ただ惜しむらくは、目次の部分で各演目のページが振られていないので、演目からその解説をたどるのに時間がかかる。残念である。資料性もある本なのでもう少し丁寧に編集して欲しかった。

 

パーソナルコンピューティングの30年:まさにパソコンの歴史

 日経パソコン創刊30周年特別編集ということで、2013年に出版された本だ。初期の頃からパソコンを触ってきたので、どんな30年だったのだろうという、少しノスタルジックな興味にひかれてこの本を購入して読んでみた。正直言って、読み物としての出来はあまりよくない。日経パソコンの各号の紹介があるという意味では資料集的な要素がある。だが、一方では、その年のトピックスを2ページでまとめた読み物的な要素がある。少しよくばりすぎて中途半端な印象を与えているのである。
 ただ、それぞれの年でどのようなPC関係のトピックスがあったのか、ということを振り返るには良い本にできあがっている。何よりも、古くからパソコンをさわってきた人にとっては、なつかしい内容である。この手の本で、回想的な内容の本はあるが、こうした年度ごとにまとめられた本は意外に少ない。
 組み込み技術者の単身赴任日記の方でも、不定期でこの本の内容から思い出した私の思い出を書いたりしている。たとえば、長年愛用したPC9801に関しては、この記事で触れている。