発狂した宇宙:宇宙の眼と並ぶ多元宇宙SFの古典

 以前、感想を書いた宇宙の眼と並ぶ多元宇宙SFの古典である。新刊は手に入らないので、古本で買うしかない。宇宙の眼はディックの作品なので、新刊が出たが、本書の著者はフレドリック・ブラウンなので再版される可能性は極めて低い。
 だが、未読の人は、古本で手に入るので是非とも読んで欲しい。文庫本の解説が筒井康隆なのだ。その筒井康隆が、「それにしてもこの作品をこれから読むという人、ほんとにしあわせな人ですなあ。」と絶賛している。
 私は、宇宙の眼よりも、本書の方が好きだ。SF作家が紛れ込んだ多元宇宙の地球では、通貨の単位が「クレジット」であり、月人や火星人も存在する。ワープ航法発見のきっかけはミシンの誤配線。SFのパロディである。この荒唐無稽な世界を、作者自身が楽しんでいる感じがする。気楽に読める古典である。