MADE IN JAPAN わが体験的国際戦略:SONYの盛田氏

 題名だけからは、国際戦略に関する盛田氏の主張をまとめた本のようにみえる。実際には、そんな単純な本ではなく、氏の生い立ち、経歴、SONY創業の話、SONYの事業展開、そして、妻子を連れての米国への展開とつづく。
 国際戦略といっても経営戦略だけでなく、教育、社交、など経営以外の話題も多い。さらに、マネーの世の中に対する警告もふくめ、盛田氏の幅広い考えが1冊にまとまった本である。

ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち:?の連続・でも納得

 読むところ全てで、?である。何で、というところからスタートする。でも、その後の説明で、納得する。「やりたいこと至上主義」とか、本当にその通りである。でも、それを言語化できるということが素晴らしい。
 ?の後の納得感が快感になる本である。

 

限界費用ゼロ社会:2017年時点で読むと既にインパクトはなくなっている

 賞味期限の短い本の典型なのか、2017年という時点で読むと既にインパクトはなくなっている。同様の議論が、あちこちでされているからであろう。
 たぶん、その発端の1つは本書だったのだろうが、シェアリングエコノミーに関する説明をするために、今では必要のない説明がえんえんと続く。現時点で、これだけのページ数の本を読む価値があるのかは、少し疑問。

ウェブでメシを食うということ:筆者の自伝-ネット社会では1973年生まれの筆者でも自伝を出せるくらいの人生になるのか

 メールアドレスを作ったけど使わなかったという筆者の経験断から始まり、ウ
エブでメシを食えるようになるまでが結構長い。ウエブを収入源とする生き方が
できるようになったのが、そんなに昔ではなく、しかも食べていける人は一握り
ということがよくわかる。
 昔話の部分は、筆者のウエブでの仕事をよく知らない私のような人間には、少
し退屈である。昔話を読むなら小田嶋隆の昔の本を読む方がはるかに面白い。

物語戦略:戦略ではなく事例集-読み物としては面白い

 物語戦略とは、買い手が語りたくなる物語を売り手が提供する戦略ということのようだ。確かに紹介されている例は、この趣旨通りであろう。でも、その戦略をどう構築するかという話になると、とたんに具体性がなくなる。事例そのものに、あまり共通項がないので、わかりにくいのだ。でも、どの事例も面白く、そういう意味では、読んでみる価値はある。

ポケモンストーリー:ビジネスってやっぱり人が作るんだ

 2000年に刊行された本なので、ポケモンGOなどの最近の話はふれられていない。題名からビジネス書ということがわかりにくいが、ポケモンというゲームから始まったキャラクタービジネスを、人を中心にビジネス史として構成した本である。
 ポケモンという大ヒットは、希有な人材が希有な人材と、いい時に出会うことで成立したのだということが、よくわかる。ビジネスの基本は、やっぱり人なのである。
 ポケモンGOに至る続編を期待する。

リストマニアになろう:自分がそれなりにリストマニアであったことがわかった

 リストマニアという題名から、どれだけすごい話かとおもって期待したら、あまり大したことはなかった。TO-DOリストの実践が半分くらい。あとは、旅行の持ち物のリストとか、買い物リストとかで、私も既に実践しっているものばかりだ。
 とはいうものの、ヒントもあり、「話すこととリスト」というのは、参考になった。苦手なことも、リスト化することが重要ということだ。

ロケット・ササキ:スケールの大きな技術者

 電卓の父として有名なシャープの元副社長佐々木さんの活躍を活写した本である。電卓の父としてしか認識していなかったが、実は、技術に対する慧眼だけでなく、多方面に人脈があり、電話1本で会うことが出来るという人間力の人でもあったことを知った。
 そんな彼でも、インテルが考えていた電卓の機能をMPUとメモリーに分割し、ソフトウエアで実現するという方式については、その近くまでいながら、届かなかったという。技術の方向性の見極めの難しさを思う。
 もう一つ心証的なのは、創業者早川とのやりとりである。いくら佐々木が優秀でも、その自由度を許容できるだけの懐の広い創業者がいないと仕事はできない。サラリーマン社長になってからのシャープの凋落がそれを端的に示している。

サムライカード世界へ:JCBカード国際化の黎明期の奮闘

 2002年刊行の本なので、情報としては古い。でも、この本の中心は、JCBカードを国際カードとして展開するにあたってのJCB社員の奮闘を描いた本なので、最後の方のICカード対応やSUICAとの連携などの話を除いては、今読んでも面白い。
 何もないところから、クレジットカードという信用がすべてのシステムを各国に売り込んでいく。想像を絶する大変さだったであろう。それ克服し、今でも国際カードとして通用しているJCBの基礎を作った人々のバイタリティーに圧倒される。

切り捨てSONY:現場を知らない経営者が企業をダメにする

 電機業界は、どこもかしこもリストラである。SANYOのリストラを描いた本に関する感想は、以前書いたことがある。
SONYは、何とか持ちこたえているのが、その陰でこんなリストラが進んでいたとは恐ろしい話である。

(会長兼CEOを務めたヘンリー・ボールソン氏が)05年度にゴールドマンサックスから得た報酬は、賞与を合わせて約44億円。(中略)
 こうしたニュースを聞くたびに、私はハワードと額を寄せ合って、「業界を間違えたなあ」と嘆きあいました。ケタが違いすぎます。
と、出井元社長が述べているという。

 SONYのリストラされた社員も、億を超える報酬を得ていた出井・ストリンガーコンビに、ケタが違いますと思っていただろうと続く。
でも、私は、思うのである。社員は、きっと、この2人は、確かに業界を間違えたに違いない。SONYに来て欲しくなかったと思ったに違いない。