ビッグデータコネクト:IT業界の多重下請構造をこれほど見事に描いた小説は読んだことがない-さらに良質な警察小説でもある

 著者の今までの作品では、一匹狼的な主人公が多かった。この作品では、IT業界の最大の闇ともいえる多重下請構造の中での、エンジニアの地獄という過酷な開発者の実態が描かれている。1次請けが稼働の3か月前に、ユーザーに説明する際に、ユーザーからスマホ対応はできないのかと問われて、1次請けがすぐに対応します、と答える。それを実現するのは、8次請けの開発者である。
 だが、これは、あくまで登場人物の設定にすぎない。小説そのものは、謎解きをしながら進む警察小説である。警察小説としては、最後の方の展開に少し無理があるような気もするが、一気に読ませてくれる力量は、相変わらずである。