好きなようにしてください-好きなことをやるのではなく「好きなようにする」

 副題は、たった一つの「仕事」の原則。キャリアに悩む人たちの質問に答えるのだが、その答えが「好きなようにしてください」である。
 この人を食ったような回答の要点は、人はいかに環境論に左右されやすいか、ということである。環境をどう選択するかではなく、自分がすることを選択しなければならない。
 ただ、この回答の素晴らしいことは、「好きなようにしてください」であって、「好きなことをしてください」ではないことである。現在のキャリア論の落とし穴は、自分にあった仕事、自分の好きな仕事があるという前提で、それに向かって、いかにキャリアアップしていくか、というようなことになる。
 そんな、一直線の効率のいい人生なんかないよ、と中年の教授が、あの手この手で話をしてくれる。同じく中年の私には、本当によくわかる。でも、今、キャリアに悩む若者には、わからないかもしれない。それでも、こんな考え方もあるよ、という参考にはなるのではないか。参考にならなくても、その文章のうまさを堪能できる。